スポーツ・インテリジェンス原論BACK NUMBER
3冠王手。青山学院の分厚さと、
原晋監督の根っこにある反骨精神。
posted2018/11/05 11:45
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph by
Shunsuke Mizukami
原晋監督が、5区の吉田祐也(3年)に向かって叫ぶ。
「名前負けすんな!」
懸命の表情でありながら、原監督はどこか楽しそうだった。
全日本大学駅伝、青山学院大は出雲についで二冠を達成し、これで三冠に向けて大きく前進した。それでも、レース展開は私が予想していたほど“楽勝”というわけではなかった。3年生に多くのタレントを抱える東海大が、序盤で主導権を握り、2区でリードを奪うと、3区で37秒、4区が終わった段階でも26秒の差をつけてリードしたからだ。
前半は、青学大にとっても誤算があったのではないか。出雲優勝の立役者のふたり、橋詰大慧(4年)を2区、鈴木塁人(3年)を3区に配置し、前半で快適なリードを築くだろうと思われたからだ。しかし、物事は簡単には進まなかった。
勝負の趨勢を決めた5区。
勝敗の趨勢が決まったのは5区である。
東海大が投入してきたのは、高校時代から実績抜群の鬼塚翔太(3年)だった。夏にケガをしたとはいえ、勝負強い。対する青学大は駅伝初登場となる吉田祐也だった。
“名前”だけを比べたなら、鬼塚の圧勝だ。原監督も黄信号を灯しかけた。
「1分になると、さすがにキツいね」
しかし、吉田祐は粘った。
原監督は言う。
「駅伝には、名前負けするということがあるんです。相手は強い、自分じゃ到底追いつけないんじゃないか? と疑問に思ってしまうことがある。吉田は無印の選手ですから、それを心配したんですが、さすが、レギュラーをつかんだだけのことはあったね」