野球のぼせもんBACK NUMBER
SB下剋上、陰のMVPは武田翔太。
「ベースに当てる意識」で西武封じ。
text by
田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph byKyodo News
posted2018/10/24 08:00
CSファイナル第4戦、2回無失点で勝利投手となるなど、リリーフで好投を見せた武田翔太。
「2番手で武田はガックリくる」
両チームの投手力の差は歴然だった。なかでも先発が早めに降りた際に登板するロングリリーフができる投手。ここが決定打となった。
ホークスのブルペンには、レギュラーシーズンで先発ローテも担っていた武田翔太、石川柊太、大竹耕太郎が控えていた。たしかに不調もあって先発から外れてリリーフに回されたという事情はある。とはいえ、期間の長短はともかくローテ経験者が何人もブルペン待機をする采配は、投手分業制が確立されている現代野球としては異例だった。
ライオンズも十亀剣がそれを担ったが、結局ほかに続く投手がいなかった。外国人枠の問題があったにせよ郭俊麟をもっと上手く活用できなかったのだろうか。
工藤監督は「短期決戦だから思い切った配置転換が出来たところもある」と認めた。
ライオンズ側に取材をすると、「ホークスはCS用の戦い方を熟知している。ウチはシーズンどおりに向かって行ったけど……」との声を聞いた。また、主力打者は「3、4点のビハインドでもと思っていても、2番手に武田(翔太)が出てくるとガックリくる」と話していたようだ。
ファーストステージから好救援。
2015年に13勝、2016年に14勝を挙げている武田に「ラッキーボーイ」という表現はふさわしくないが、CSはファーストステージからキーマンとなったのは間違いない。
福岡で戦ったファイターズとの第1戦。先発したミランダが乱調で、4回表1死満塁で降板してしまった。武田は「満塁から登板するのは初めてだった」と重圧を感じていたが、見事な投球でピンチを凌いだ。2番・大田泰示を初球のサードゴロで打ち取った。
「初球から打ってきそうで、ストレートを待っている気配だったからスライダーを投げた」と驚くほど冷静だった。続く近藤健介はカウント1ー2からのフォークボールで空振り三振に仕留めた。
すると武田が吠えた。ガッツポーズも見せた。いつも冷静で、どこか人の心を見透かしているような男の姿に、チームメイトや首脳陣からも驚きの声が上がったほどだった。