マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
西村健太朗、15年間おつかれさま。
ガンコで一途な高3春の思い出。
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byNanae Suzuki
posted2018/10/23 08:00
西村健太朗は巨人で一途な15年間を過ごした。そのキャリアは、高校生の時の姿の延長線上にあった。
興味のあることには驚くほど饒舌。
「外に引っかけたボールなんて、ダメなボールだと思うじゃないですか」
西村健太朗、ちょっと取っつきにくい無口な少年かな、と勝手に“警戒モード”で会いに行ったのだが、人には会ってみなくちゃわからない。興味のあることには、驚くほど饒舌だった。
「田村さんが言うには、同じ投げ損じでも、外に引っかけたボールはただの1ボールだから、投げ直してストライクとれば1-1の平行カウント。でも、投げ損じて構えた所より中に入ったらホームランまであるだろ、っていうんですよ。すごく説得力あるじゃないですか」
簡単に笑うようなヤツじゃなかったが、話す口調の中に満面の笑みがあった。
「ストライクになるような投げ方も教えてくれるんですけど、ボール球にも“良性”と“悪性”があるっていうんですか。コントロールの意味まで教えてもらえるんで」
指導者が輝くか否かは、教えを受け止める者の“アンテナ”の質が決めるのか。
「それだけは絶対にやめてください!」
「いえ! まだ外でお願いします!」
20球ほども外が続いていたから、そろそろこっちいこうか? と、ミットで“内”を示したら、健太朗くんに一蹴されてしまった。
「今日は、外いっぱいに投げる感覚をつかみたいんで」
こうと決めたら、どこまでも。
中井監督をうならせた西村健太朗の一途さ。時として、それを「ガンコ」と表現されることもあるのだろう。“真っすぐ”だからぶつかることも。
「野球の度胸と、バスの中で唄う度胸って、関係あるんですか……?」
いくらか恐るおそる問い返してきた。
そうだよなあー、健太朗くんがそう言ってたって、中井さんに言っとくよ。
もちろん、悪い冗談だったのだが、
「やめてください! それだけは絶対にやめてください!」と手を合わされて、やっぱり真っすぐなヤツだな……とちょっとかわいかった。