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酒井高徳から“若き代表”への言葉。
「19歳で代表入りするくらいないと」
text by
本田千尋Chihiro Honda
photograph byAFLO
posted2018/10/16 11:30
ベテランとしての役割を一身に背負ってハンブルガーSVを牽引し続けている酒井高徳。
「僕の年齢で代表を強くするっていうのは」
こうして純粋なフットボーラーとして、ハンブルガーSVのために戦っている酒井。昇格を義務付けられたシビアな戦いの中、27歳の日本人サイドバックは、ますます円熟味を増していくだろう。代表引退を表明していなかったら、これからも“サムライ・ブルー”の一員に呼ばれ続けていたに違いない。
極端な例えになるが、もし、これから怪我人が相次ぎ、日本代表がW杯アジア予選で窮地に陥ったとしたら……。いわばピンチの時に声を掛けられたとしても、代表復帰はないのだろうか? そんなこちらの問いを、酒井は、高らかに笑い飛ばした。
「いや、そんなピンチの時に助けるほどの力量はないので(笑)。あの、全然僕なんか必要とされないぐらいが、代表にとってはいいと思いますよ。
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若くて才能ある選手が本当にいっぱいいると思うし、何度も何度も話していますけど、僕の年齢で代表を強くするっていうのは、代表にとって良くないことだと思っているので」
若手に甘えが出ない状況を作らないと。
酒井は、代表引退を決断した理由の“核心”のようなものを話し始めた。
「ちょっと日本の悪いところでもあるというか、若手が育たないからベテランを……といった感覚があるんですけど。いや、ベテランがいないっていう状態で、若手がもっと自分たちがやらなきゃいけないっていうぐらい追い込まれた状態を作らないといけないと思っているんです。それくらいしないとやっぱり、いつまでたっても甘えが出る。
僕も『自分がやってやろう』って気持ちがある反面、ユウトくん(長友佑都)とアツトくん(内田篤人)が最終的にポジションに戻ったら『まあ、あの2人がやってくれるから大丈夫だろう。自分の力不足だし』なんて思っていた時もあったので。
だから、この経験を他の選手たちに伝えるとしたら……あえて自分(酒井)がそこにいない、頼るべきベテランがまったくいない、そういう状況を作ることが、将来的には日本のためにもなると考えていますので」
若手のより一層の奮起を促すため、酒井は「あえて」代表から退いた。ベテランが不在の状況を「あえて」作り出すことで、若手の尻に火を付ける。そうすることが、ゆくゆくは日本サッカーの成長に繋がる。母国の未来を慮った上で、酒井は、日本代表から退いたのだ。これは、単なる綺麗事として言える気持ちではないはずだ。