ぶら野球BACK NUMBER
10.8前夜の特濃ミスター伝説。
槙原・斎藤・桑田の証言がバラバラ?
text by
中溝康隆Yasutaka Nakamizo
photograph byKoji Asakura
posted2018/10/07 11:00
伝説の夜、10.8のマウンドで勝利を喜ぶ桑田真澄。日本球史で永遠に語り継がれる試合となった。
「痺れるとこで、ね。頑張ろう!」
「うん? もう痺れるところですよ。クワタ! 痺れるとこで、ね。頑張ろう! よし!」
無茶苦茶である。
しかし、ある意味三本柱それぞれが、結果的に大一番の緊張から解かれ、長嶋茂雄の掌の上で転がされているようにも思える。部屋に呼ばれた者(槙原)、呼ばれなかった者(斎藤)、なんだかよく分からない起用法を示唆された者(桑田)。だが、その翌日には彼ら3人の投手リレーで中日打線を3点に抑え、天下分け目の決戦を制することになるのだから、野球は面白い。
プロ野球史上最高の視聴率を記録した24年前の10.8決戦で主役を張った男たち。斎藤雅樹、桑田真澄、槙原寛己、全員が通算150勝以上を挙げた平成球界を代表する三本柱が過ごした「10.7の夜」の真実は、数十年後も語り継がれることだろう。
『ジャイアンツ80年史 PART.2』(ベースボール・マガジン社)のインタビューで斎藤はこんな言葉を残している。
「僕らは3人でエースの仕事を分担し、ケガや不調のときはカバーできた。チーム内のライバルでありながら、助け合いながら投げた、信頼できる仲間。そういう三本柱だったと思います」