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ドイツで臥薪嘗胆、21歳の伊藤達哉。
小柄なドリブラーが才能に目覚める時。
text by
本田千尋Chihiro Honda
photograph byTF-Images/Getty Images
posted2018/10/09 07:00
長身でガッシリした選手が多いブンデスリーガで、そのテクニックを生かして活躍を続けている伊藤達哉。
「僕のシーズン、やっと始まったな! と」
このように2部の舞台で日々「課題」と向き合いながら、伊藤の中では、「責任」のようなものも芽生えている。
「(フュルト戦の)前半はやっぱり、みんな前節の負けで、ちょっとビビって入っている感じもあったので。
若いチームですし、誰かが引っ張っていかないといけないところではあるんですけど。僕が引っ張れたらいいんですけど。シーズンの最初は、新しい背番号になって、今季は僕がチームを引っ張って優勝して……と考え過ぎちゃって。空回りしていた感じがある。
今は良い方向に向いていると思う。僕のシーズン、やっと始まったな! という感覚が最近あるので」
日本代表への想いは、あえて封印。
そして、日本代表への想い。
「僕、前回呼ばれた時には結局試合に出れなくて……あれだけの時間移動して、試合に出れないで帰ってきて、っていうのは、やっぱりちょっとしんどいものがありましたね。
でも、例えば自分が練習でもっとアピールできていたらまた違った結果だったと思っているんですよ。
今は、2、3週間くらい前から体がまたトップフォームに戻ってきている感覚があるので、もう一回代表に行きたいですね。もう一回行ったら、また違う形でアピールできるはず。ただ、そうですね……今は代表のことは頭に無いんですよ」
9月の日本代表戦。11日に行われたコスタリカ戦で、出番は回ってこなかった。
北海道胆振東部地震の影響による7日のチリ戦が中止になっていなければ、また違った結果だったのかもしれない。
だが伊藤も言うように、こればかりは「誰が悪い」という問題ではない。そもそもハンブルクで道を切り拓いてきた若きアタッカーに、リベリーやロッベンのような「試合を決める」力があったなら、否が応でも使われたはずなのだ。
その「課題」を自覚しているからこそ、日本代表への想いは、あえて封印している。「今は」ハンブルガーSVの戦いに集中している。
4日に行われた10月の日本代表戦に臨むメンバー発表の会見で、森保一監督が、伊藤の名前を呼ぶことはなかった。9月のメンバーからは南野拓実、中島翔哉、堂安律らが引き続き呼ばれ、ロシアW杯出場組からは原口元気が復帰。この代表チームには、ドリブルが巧いライバルが多い。だが、伊藤が「課題」を克服した時――。
特に引いた相手に手こずることも多いアジアの戦いで、その軽やかなドリブルは、必ず日本代表の武器になるはずだ。