欧州サッカーPRESSBACK NUMBER
ドイツで臥薪嘗胆、21歳の伊藤達哉。
小柄なドリブラーが才能に目覚める時。
text by
本田千尋Chihiro Honda
photograph byTF-Images/Getty Images
posted2018/10/09 07:00
長身でガッシリした選手が多いブンデスリーガで、そのテクニックを生かして活躍を続けている伊藤達哉。
「試合を決定してもらうために後半から行く」
9月27日、木々が穏やかに色付くバイエルン州、ニュルンベルク近郊の小さな街――。
対グロイター・フュルト戦のため、敵地に乗り込んだハンブルガーSV。チームが「ボールを握っているようで握らされているだけ」だった前半を0-0で折り返すと、伊藤は、後半開始からの出場となった。
ポジションは左サイド。
試合の前にティッツ監督からは、「最後に試合を決定してもらうために後半から行くから」と話をされていたという。求められたのは、勝利のための分かりやすい結果、つまりゴールもしくはアシストである。
指揮官の期待を背負いながら、伊藤は積極的に仕掛けていった。だが、相手を抜き去って、クロスを上げるまでには至らず。味方とのコンビネーションで崩そうとしても、リターンパスは敵のDFにブロックされてしまう。なかなか仕事をさせてもらえない。52分には、コンビを組んだ酒井高徳との連携で左サイドを突破。ペナルティエリアに入ったところで足を掛けられて倒れたが、主審は笛を吹かなかった。
前半とは打って変わり、ボールを奪われてもすぐに奪い返し、どんどん攻撃を仕掛けていったハンブルガーSVだったが、最後までゴールに結び付くことはなかった。
90分を終えて、結果はスコアレスのドロー。このフュルト戦に限れば、伊藤はインパクトを残すことはできなかった。
体はトップフォームに戻ってきた。
試合後、背番号11の口を衝いて出たのは、反省の弁だった。
「日曜日の試合も、結構チームの結果は悪かったですけど(前節対レーゲンスブルク戦は0-5の大敗)、個人的にはメチャメチャ良くて。それでも結局得点に繋がらなかったっていうのは自分の課題なので。
今日も思い返すと、突破もちゃんとしているんだけど……もっと賢い選手だったら得点に繋げられるシーンがあったなって思うんです。そういうところは監督から試合前に言われていて、『お前、また体が動くように、トップフォームに戻ってきたのが分かっているから。今日はお前のために、最後に試合を決定してもらうために、後半から行くから』っていう話ももらっていた。
なので、今日は試合を決めるかどうかだけが良いか悪いかの判断基準だったので。そういう意味では……悪かったです」
9月の日本代表での活動から戻ってきて、伊藤は体調を崩してしまっていた。
9月15日のハイデンハイム戦、18日のディナモ・ドレスデン戦と2戦連続で欠場。だが、「個人的にはメチャメチャ良くて」と振り返ったように、23日のレーゲンスブルク戦では90分間フル出場。コンディションを戻してきていた。ドリブルで仕掛け、相手を抜くことはできる。ただ、そこから「得点に繋げられる」かどうか。敵を抜いた後が「課題」なのだ。
「そこが課題だし、そこが自分の今後、どういう選手になっていくかを分けるところだと思っています」