フランス・フットボール通信BACK NUMBER
サンチャゴ・アロヤベの勇気と情熱。
障害を乗り越えプロのサッカー選手へ。
text by
ロムアルド・ガデベクRomuald Gadegbeku
photograph byDR
posted2018/10/02 07:00
プロサッカー選手になる……という夢を粘り強く、絶対に諦めず追いかけたサンチャゴ・アロヤベ。ハンディキャプと偏見を乗り越えて、夢を実現したのだ。
「限界は自分の頭の中にある」
「スポーツをすることで、僕は片腕でも健常者とまったく同じようにできることを理解した。家族がずっと後押ししてくれて、彼らの支えがなかったらここまで来ることはできなかった」
それだけ言うとアロヤベは、腕に彫られたタトゥーを誇らしげに示したのだった。
「この時計(の入れ墨)は8時半を指している。僕が生まれた時間なんだ。これはマオリ族のタトゥーで家族とボールを象徴している。僕の人生をよく要約しているだろう」
もちろん苦しい時期もあった。
昨年は膝の故障で、3カ月間ピッチに立つことができなかった。それでも彼は困難を克服し、家族の愛から生まれた持前の明るさを保ちつつソーシャルアカウントで自らを語り続けた。
「限界は自分の頭の中にある。僕はサッカーの能力で認知されているのであって、ハンディキャップを背負っているから認知されているわけではない」
それこそが彼が発したメッセージだった。
「すべてが可能であると僕は言いたいだけなんだ。もし僕が片腕でもプロとしてやっていけることを示せたら、多くの人たちがそれまでは絶対に不可能だと思っていたことを実現できるかも知れない。自分を客観視できるようになるだろう」
「いつの日か、アルゼンチンかブラジル、スペインで」
野心は衰えてはいない。
最大の望みはこの7月に開幕したリーグ戦(後期)の出場を果たすことである。“プロフェッサー(教授)”の異名をとる開幕当時の監督だったアルバレスは、すべては彼次第であると語っていた。
「(リーグ戦で)プレーできるかどうかは運命が決めることだ。彼がどれだけ努力し、どれだけ強く望み続けられるか。スタメンのポジションは誰にも保障されていないのだからね」
だが、アロヤベ自身はさらに先を考えている。
「いつの日か、アルゼンチンかブラジル、スペインでプレーがしたい」
今はまだ、最初の夢がかなったに過ぎないことを、彼も、また周囲もよくわかっている。大いなる挑戦はこれからはじまる。