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サンチャゴ・アロヤベの勇気と情熱。
障害を乗り越えプロのサッカー選手へ。
text by
ロムアルド・ガデベクRomuald Gadegbeku
photograph byDR
posted2018/10/02 07:00
プロサッカー選手になる……という夢を粘り強く、絶対に諦めず追いかけたサンチャゴ・アロヤベ。ハンディキャプと偏見を乗り越えて、夢を実現したのだ。
障害はプロ選手への道の邪魔にならない。
アロヤベは、生まれながらのサリドマイド症だった。生誕の時点ですでに右腕片腕で、その右腕は萎縮していた。ところがそのハンディキャップも、彼がコロンビアのプロリーグに到達する障害にはならなかった。2本の脚と明晰な頭脳で、彼は国内の最高峰まで登り詰めた。2015年のロレンソ・オレジャノに続き、片腕ながらプロの公式戦でプレーした2人目のコロンビア人となったのだった。
イタグイ・レオネスのカルロス・ムリージョ会長が、アロヤベ獲得の経緯を説明する。
「クラブのふたりのスカウトが4年前に彼のプレーを見て、技術レベルは卓越しているからぜひ獲得すべきだと強く進言した。実際、片腕しかないことは何のハンディキャップでもなかった。今の彼を見れば、私たちの判断が間違いでなかったのがよくわかる」
とはいえここに至るまでの道のりは決して平たんではなかった。
監督も絶賛するそのフェイント技術。
20世紀初めにブラジルの黒人たちが、白人選手とのコンタクトを避けるために様々なドリブルの技術を作り出したように、アロヤベも対戦相手のフィジカルコンタクトを避けることなしにはトップへの道のりはありえず、その第一の武器がフェイントだった。
アロヤベが語る。
「最初はとても難しかった。かろうじてチームに入れてもらった子供が、試合には出られないと言われるのは仕方ないが、当然ながら子供は落ち込む。ピッチの上で応えるんだという気持ちが僕の力になった。でも左足はよく褒められたよ(笑)」
リオネル・メッシのファンで、ポジションは攻撃的ミッドフィールダー。彼にはプレーの緩急に独特の間合いがあった。
「足元の技術がしっかりしていて、長短のパスを自在に繰り出すことが彼はできる。キックも力強いし、ファーストタッチの感覚が優れていて身体を使ったフェイントが素晴らしい」と、前監督のフアン・カルロス・アルバレスは言う。
「ペレイラ戦に投入する際には、セットプレーはすべて彼が蹴るように指示したよ」