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ロナウドを封じろ――。最強FWと
守備の国イタリアDFたちの熱き攻防。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byGetty Images
posted2018/09/19 16:00
4節サッスオーロ戦で移籍後初ゴールを含む2得点を挙げたロナウド。8連覇を目指すユベントスは4連勝で無敗のまま、首位に立っている。
背中からどつき倒す洗礼も。
「C・ロナウドは厄介な問題だよ」
2節目で対戦したラツィオの指揮官シモーネ・インザーギは、前日会見でこう断じた。サッカーが個人競技でないことは百も承知だが、バロンドールを5個も所持する男を野放しにはできない。
インザーギは昨季、スーペルコッパとリーグ戦で絶対王者に2度も土をつけた若き智将であり、現監督アッレグリの有力な後任候補と見られている。
敵地での大一番を前に「C・ロナウドには特別な警戒態勢を敷く。世界最高の選手だよ、そう簡単には止められないだろう」と名指しした上で最大限の警戒を公言した。
キエーボは低く構えたが、インザーギ率いるラツィオの3バックは異なるアプローチで臨んだ。ハイプレスをかけ続けることで重心を上げて、相手にペースをつかませない。
191cmのラツィオCBウォラスは、3トップの左サイドから中央でプレーしたC・ロナウドに、ペナルティエリアの中で仕事をさせなかった。
相手のクロスには必ず先んじて体を入れ、シュートを許したのはエリアの外からだけ。対峙する右サイドでDFマルシッチと組んだCR7へのダブルマークは、後半アディショナルタイムに入っても徹底していた。
狡猾なウォラスは、ボールをもらおうと中盤まで下がったC・ロナウドを背中からどつき倒す嫌がらせももちろん忘れなかった。セリエAの洗礼だ。
盟友は尻を蹴り上げるように……。
ただし、勝ったのはやはりユーベだった。
CR7へ相手の意識が集中すれば別の選手がフリーになりやすい。前後半それぞれでMFピアニッチとFWマンジュキッチが効率的に点を決めた王者に対し、得点機に決めきれなかったラツィオは善戦虚しく、0-2でアリアンツ・スタジアムに散った。
3戦目の相手パルマは、昇格組とはいえある意味C・ロナウドにとって最もやり難い相手だったかもしれない。
最終ラインで待ち構えるのは、'04年アテネ五輪時代からポルトガル代表でともに100試合近く戦ってきた盟友であり、今夏のバカンスも家族ぐるみで一緒に過ごした親友であるベテランDFブルーノ・アウベスだったからだ。
「昔、いっしょにメシ食っていたときにクリスティアーノのお袋さんに聞いたんだ。『もし、試合で対戦することになったら(真剣勝負だから)たとえ息子さんであろうと、俺は尻を蹴り上げるくらい激しく当たりますよ』ってね。彼女は笑ってOKをくれたよ」
マンチェスター・U時代のロナウドと実際に対戦経験のあるB・アウベスは、彼のことならボールを持った後の最初の1ステップ目の癖から、今ハマっている健康飲料がウコンと生姜、レモンを使ったものであることまで知り尽くしている。互いに健康マニアである2人は、健康食品情報を日毎交換し合うほどの仲なのだ。