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浦和・岩波拓也はポドルスキ公認。
靴職人の父と水風船がパスの原点。
posted2018/08/25 17:30
text by
杉園昌之Masayuki Sugizono
photograph by
AFLO
記録的な猛暑が続く今夏、浦和レッズに異変が起きている。汗をかかないボールが、縦に斜めに高速で長い距離を移動していく。ロングパスの出どころは、右サイドの深部。後半戦の途中から3バックの一角に抜擢された岩波拓也は、7月末にベルギーのシント・トロイデンへ電撃移籍した遠藤航とは異なる持ち味を発揮し、存在感を示している。
「ロングフィードは僕の長所。難しいところでも通せる」
涼しい顔でこともなげに言ってのけるほど自信がある。昨季まで在籍していたヴィッセル神戸時代からキックに定評はあったものの、浦和ではパススピードがさらに上がっている。
開幕前のキャンプから浦和では強いパスを出しても、「うまくいく」と確信していた。昨季、神戸でルーカス・ポドルスキとプレーし、しっくりきていた感覚だ。
一時期は受け手がコントロールに苦しむこともあり、「これでいいのか」と自問自答したこともあったが、元ドイツ代表FWに強い縦パスを認められ、「これでよかったんだ」と自らに言い聞かせた。いま浦和では、そのボールが存分に生きており、チームメイトたちも新たな武器のプラス効果を実感している。
武藤、槙野も認めるパス能力。
パスを呼び込むことに長けた前線の武藤雄樹は、「動けば、ボールが出てくる」と声を弾ませる。
「(岩波は)パス能力。見えている場所は、すごくレベルが高い。くさびはもちろん、裏に走ってもいいボールがくる。(岩波のパスが起点となってゴールが生まれた)川崎フロンターレ戦のようにね」
同じ3バックに入る槙野智章は、精度の高いビルドアップがもたらす好影響を口にした。
「後ろからも攻撃のスイッチを入れる回数が増えた。いまはボールと人の動かし方に深みが出ている。1本のパスで2、3人を置き去りにでき、局面も打開できる。ドリブルよりもずっと効率がいい。すごく効いている」