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OBが認める「読売クラブ」らしさ。
U-21渡辺皓太が見据える東京五輪。
posted2018/08/24 11:00
text by
海江田哲朗Tetsuro Kaieda
photograph by
J.LEAGUE
身のこなしが軽く、俊敏。小柄だがボディコンタクトに長け、相手の懐にギュンと入り込んでボールをもぎ取る。攻撃に転じると、ドリブル、ワンツーを駆使し、守備ブロックを崩していくのが持ち味だ。
渡辺皓太(こうた)は東京ヴェルディのアカデミーで育ち、2016年、高3の春に2種登録選手としてトップデビューを果たした。
「あいつはモリシになれる」
そう言ったのは、東京Vの育成組織で長く指導し、2014年の途中から2016年までトップの監督も務めた冨樫剛一である。それを聞いた私は、ずいぶんと大きく出たものだと思った。
モリシとは、元日本代表でワールドカップに2大会出場した森島寛晃氏。セレッソ大阪のレジェンドとして知られる。1990年代から2000年代の日本サッカーにおいて、攻撃のリンクマンとして水際立ったプレーを見せたミッドフィルダーだ。
相手が寄せてきたらひゅっと逆を。
指導者たる冨樫の美質のひとつに言行一致がある。2016年、東京Vは下位に低迷し、18位でJ2にギリギリ残留した。苦境において大抵の指揮官はベテランに頼りたくなるものだが、未知数の渡辺を積極的に起用。その豊かな資質に信を置いた。結果、出場した11試合で目立った成果を残せず、この登用は成功だったとは言い難い。が、そこでの挑戦的な試みは現在に生きている。
トップのコーチを務める藤吉信次が、古巣の東京Vに復帰したのは2015年。ユースの監督に招聘された。そこで、周囲から「面白いのが2年生にいますよ。コウタっていう、昔の読売クラブっぽいヤツ」と聞いた。
「野性的で、人のできないプレーをやってのける。こいつはお客さんを呼べる選手になると思いました。あのボールを斜めに見る感じがいいんだなあ。わざと正面から見ずに視野の端に収め、相手が寄せてきたらひゅっと逆を取る。昔、ジョージさんがよくやっていたプレーです」