マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
根尾昂と同じ野球&スキー二刀流。
上村和裕スカウトの根尾評が深い。
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byHideki Sugiyama
posted2018/08/17 20:00
投手として、打者としての評価が目立ちがちだが根尾昂はフィールディングも一流なのだ。
二刀流出身のスカウトならではの視点。
野球のほうは、地元・空知滝川シニアで俊足強打の中心打者をつとめ、捕手と外野を守っていたという上村和裕選手。
北照高では、3年春のセンバツでキャプテンをつとめて北海道No.1捕手の評価を得ると、2000年のドラフト会議で、オリックスの3位指名でプロ野球に進んだ。
オリックス、広島合わせて14年間のプロ野球生活はファームが多かったが、2015年からオリックスに戻ってスカウトに就任。主に北海道・東北地区を担当して、出張続きの忙しい毎日を送る。
根尾昂と同様に、スキーと野球の“二刀流”の中学時代を送った上村スカウト。きっと彼ならではの切り口で根尾昂のプレーを追ったはずだ。
「根尾がちゃんとした正式競技としてのスラロームをやってきたのに対して、僕の場合は、今のモーグルみたいにいろんなアクロバチックな運動も加えた遊びのスキーなんですけど……もちろん、回転もできます。スキーならジャンプだってできますよ、ラージヒルは無理ですけどね」
「野球の方が、ずっと難しいっす……」
アクロバチック……たとえば、自分たちでちょっとしたジャンプ台を作り、そこから飛び出した勢いで、“でんぐり返し”のように前にひと回転して斜面に着地、そのまま滑り下りる「フロントフリップ」。
「もちろんスキー履いたままです、はい。日本語では“前宙”とも言います。あとは、360°横にひと回転するのがヘリコプター。そうです、やっぱりジャンプ台から飛び出した勢いで。上に飛び出すんじゃなくて、水平に、前に飛び出す要領で。モーグルでもやってますよね、よく似た動きで」
聞けば聞くほど、トリッキーな人間離れしたアクションに聞こえるが、
「いや、野球のほうが、ずっと難しいっす……」
頭をかきながら、笑っている。
「根尾なんか、やってきたスキーのレベルもすごく高いんで、スキーのメカニズムのいいところ、あちこちに利用してると思うんです」