マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
根尾昂と同じ野球&スキー二刀流。
上村和裕スカウトの根尾評が深い。
posted2018/08/17 20:00
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph by
Hideki Sugiyama
夏の甲子園100回大会・第9日、大阪桐蔭高・根尾昂が沖学園戦の7回に高校通算28本目の本塁打を放ってみせた。
先発でマウンドに上がったこの試合、ピッチングのほうは「快刀乱麻」というわけにはいかなかった。
6回表まで沖学園に3-3と食い下がられ、その裏、自分でセンター前に弾き返して突破口を作って奪った4点のリード。
ホッとひと息つけて、肩の余分な力も抜けたのか。
1回戦からそうやって打てばいいんだよ……。
思わずつぶやいてしまったほど、力みとか気負いとかそういう“雑味”の抜けた、伸びやかでちょうどよい力の入れ具合のフルスイング。打球は、目で追うのがつらいほどのスピードのライナーで、バックスクリーンに突き刺さった。
すごい打球だった。
8回の藤原恭大のレフトスタンドへの一撃もすばらしかったが、私が根尾昂のプレーを見ていて思いだすのが、これだけすばらしいスイングができ、すばらしいホームランを打ち、その上、145キロ前後の快速球とプロ級のスライダーを投げ分けてみせる彼が、中学の半分は競技スキーに打ち込んでいたということだ。
おおかたの高校球児たちが、中学3年間のほとんどを野球だけに専念してきた中で、ほぼ半分近くの時間を別のスポーツに取り組んできた根尾昂。そんな彼が、大舞台でもこれだけのスーパープレーを体現してみせるから、よけいにすごい! と敬意すら表したくなるのだ。
スキーと野球の二刀流がスカウトにも。
あまり知られていない話だと思うが、そんな根尾昂のプレーをネット裏から見つめるスカウトの中に、彼と同じ「スキー&野球二刀流」のスカウトがいる。
根尾昂が飛騨の雪里の出身なら、オリックスバファローズ・上村和裕スカウトは、北海道の大雪原・滝川市で生まれ育った。
「高校は、小樽の北照に進んだんで、実家を離れたんですけど、中学までの冬は、もうベタでスキーでした。学校終われば、そのままスキー場に行って、北海道は冬休みが1カ月ありますから、スキー場に自分のスキーを預けておいて、リフトの“一番”から“最終”まで。中学の頃は、野球より一生懸命だったかもしれないですね」