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創志学園・西純矢の雄叫びと本性。
審判と戦い、知った甲子園の怖さ。
posted2018/08/15 14:10
text by
中村計Kei Nakamura
photograph by
Kyodo News
疲労と困惑が入り交じった表情で、初回を投げ終えたときのシーンを振り返った。
「ベンチに戻る途中に主審に『(マウンドで)必要以上に吠えたりするな』とか強めに言われて……。苛立ってしまい、素直に聞くことができませんでした。バッターではなく、審判と勝負してしまいました」
創志学園の2年生エース・西純矢は、2回戦の下関国際戦で179球を費やすも、4-5と逆転負けを喫した。
西は1回戦の創成館戦では、4安打完封勝利を挙げた。16三振を奪い、四死球はゼロだった。この日は、そのときとはまったくの別人だった。
もどかしさと緊張を解くために。
「最初から腕が振れていなかった」
2回表には、さっそく四球と死球を1つずつ与える。下関国際打線は1球ごとに打席の中で立つ位置を変えたり、バントの構えをしたりして西を揺さぶった。
「ああいうことをしてくるチームは初めてで、揺さぶりに引っかかってしまった……」
2アウト二、三塁のピンチを招いたが、ここは8番・品川優人を外の148キロの見逃し三振に切って取る。すると、肩を怒らせ、再び雄叫びを上げた。
その様子は、なかなか自分の投球ができないもどかしさを振りほどこうとしているようにも映った。
上がり症の西は、大声を出すことで緊張を解いてもいた。だが、主審の注意は何回にも及んだという。
「自然に出てしまうものなので……」
3回表、西はタイムリー二塁打で1点を失い、さらにこの回2つ目の四球を出して0アウト一、二塁のピンチを招く。すると、ベンチを指さし、次の投手を準備しておいてくれるように頼んだ。
「そんなことをしたのは初めてです」