草茂みベースボールの道白しBACK NUMBER
松坂大輔のいるところドラマあり。
平成ラスト球宴、怪物が何か起こす。
text by
小西斗真Toma Konishi
photograph byKyodo News
posted2018/07/05 11:30
2004年のオールスター第2戦、3回裏、全パのSHINJO(日本ハム)が球宴史上初の単独本盗に成功し、MVPも獲得。
日本ハム近藤、ソフトバンク柳田も。
山川が本塁打なら日本ハムの近藤健介は「最も打率4割に近い男」だ。横浜高の大先輩でもあり「雲の上の存在。神様のような人」と謙虚だが、打席に立てば「どんなボールがきても、胸を借りてフルスイングします」と対戦を心待ちにした。
さらに舞台が藤崎台球場と聞けば、黙っていられないのがソフトバンクの柳田悠岐だ。左中間にどっしりと根を張る樹齢1000年ともいわれるクスノキ。球場のシンボルツリーだ。「あのクスノキに向かってかちあげたい」と鼻息は荒い。
交流戦での松坂との対決では四球、見逃し三振、空振り三振と「けちょんけちょんにやられたから、今度は……」と元祖リベンジ男へのリベンジに燃えている。
その柳田で8歳、山川は11歳、近藤とは13歳離れている。世代が違う打者からも「ターゲット」に指名されるところが、松坂の存在感でもある。
そんな松坂も球宴の舞台に臆することなくセ・リーグの打者に挑み、腕を磨いてきた。初出場はもちろんルーキーイヤーの1999年。強運にも本拠地・西武ドームで第1戦が開催された。不運な失点で敗戦投手にはなったが、3回で5奪三振。優秀選手に選ばれたところから、松坂の球宴はスタートした。
2004年にMVP受賞、自己最速156キロ。
唯一のMVP受賞は2004年の第1戦。現在のホームグラウンドであるナゴヤドームで2番手として登板し、2回をノーヒット4奪三振。自己最速に並ぶ156キロを計測した。そして松坂自身が「オールスターで最も印象に残っているのは?」と問われ、答えた試合がこの年の第2戦だ。
長野オリンピックスタジアム。これでピンとくる野球好きも多いはずだ。日本ハムのSHINJO(新庄剛志)が単独ホームスチールをやってのけ、MVPもかっさらっていった。
このときの名セリフが「これからはパ・リーグです!」。
すごい選手がいる、もっと知ってもらいたい……。そんな思いから出た言葉だが、翌年から導入された交流戦での圧倒的強さを見る限り、14年を経た「今もパ・リーグです!」といったところか……。