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「もっとリリーフの感覚で」先発転向のカープ栗林良吏が迷いを断ち切り、ようやく見出した自分だけの「先発投手像」とは

posted2026/03/16 11:00

 
「もっとリリーフの感覚で」先発転向のカープ栗林良吏が迷いを断ち切り、ようやく見出した自分だけの「先発投手像」とは<Number Web> photograph by Sankei Shimbun

今春3度目の実戦登板となったDeNA戦で、5回を無失点で投げきった栗林

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前原淳

前原淳Jun Maehara

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Sankei Shimbun

 プロとして初めて足を踏み入れる境地は手探り状態だ。昨季まで5年、通算271試合すべて中継ぎとして戦ってきた栗林良吏は、今年、先発として歩を進めている。

 抑えから立場が変わった昨季終盤、新井貴浩監督と直接意見をかわして決断した。周囲からは期待の声もある一方、懐疑的な声も決して小さくはない。今年7月に30歳となる。怖いもの知らずで突き進める年齢でもなくなっただけに、本人も不安を感じていた。

 春季キャンプではプロで初めて100球以上の投げ込みを行い、投球テンポを意識した。攻撃へのリズムづくりを意識して、ブルペンからピッチクロックのタイム内に収まるペースで投げ続けた。長いイニングを投げるためには、直球との球速差のある球種の重要度が増す。持ち球の精度向上に加え、スライダーの習得を目指した。

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 新たな挑戦は心身ともに小さくない負担を伴う。春季キャンプ中には腰の張りで一時、調整のペースが落ちたこともあった。

 周囲の雑音や自身の不安を振り払うには、「先発栗林」として結果を残すしかなかったが、思うようにはいかなかった。初の対外試合となった2月23日のヤクルト戦は、2回無失点だったが毎回安打を許すなど課題が残った。

2度の失敗から見出した答え

 2度目の対外試合登板となった3月4日の春季教育リーグ中日戦では、4回まで毎回安打を浴び、3失点。追い込んでも空振りが取れず、変化球は見切られ、真っすぐは甘く入った。キャンプ中から意識した変化球を四隅にきっちり投げ切ろうとするあまり、腕の振りが弱くなっていた。また、投球テンポへの取り組みから体の開きが早くなり、フォームを崩した。長いイニングを投げる意識が、立ち上がりの集中力を鈍らせていた。

 大島洋平や阿部寿樹といった実績ある選手がスタメンに名を連ねていたとはいえ、言い訳のできない結果にひとつの答えが見つかった。

「床田(寛樹)さんや(森下)暢仁は、強く投げているように見えなくても150km近い球でバッターを詰まらせている。それが理想像ですけど、まだ自分にはできない。そこまで器用じゃない。自分でももっと先発っぽくやりたかったし、やれるんだという気持ちでしたけど、2試合投げさせてもらって自分にはまだできないと実感できた。だからこそ、リリーフの気持ちで行かないと、不甲斐ないピッチングを続けることになる」

 先発転向を悔いているわけでも、リリーフに戻りたいわけでもない。迷いを断ち切り、こうしなければいけないという固定観念を打ち壊した。

【次ページ】 リリーフの経験を生かして

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