月刊スポーツ新聞時評BACK NUMBER
西野ジャパン、ボール回しの絶望と希望。
日本のマスコミが考えるべき課題とは。
text by
プチ鹿島Petit Kashima
photograph byAsami Enomoto/JMPA
posted2018/07/02 17:00
ボール回しに賛否両論あるのは確かだが……ピッチ上では監督と選手たちの意識にまったくズレは無かった。
金子「取り戻せ。誇り、名誉」
見出しは「W杯史上2番目にひどい試合。日本の醜悪な試合」ときて「だからこそ激しく飢えろ、取り戻せ。誇り、名誉、未来のために――封印した牙で、赤い悪魔を食いちぎれ」と。
セネガル戦で日本の「見苦しい行為は皆無だった」と書いた金子達仁氏からすれば当然の流れか。これもスポーツ紙を追う面白さだ。
※ちなみにW杯史上最悪の試合とは金子氏曰く80分間時間稼ぎをした西ドイツとオーストリアの試合(1982年)であり、「赤い悪魔」とはベルギーの異名である。
野球記者も「ブレない覚悟」「勝負根性」に感服。
スポーツ新聞でもジャンルが違う記者はあのボール回しをどう見たか?
デイリースポーツの『前トラ番キャップ・吉田風の取材ノート』(6月30日)は、
《これでグループリーグ敗退なら、永久批判は免れなかった。まして4年に一度、視聴率40%を超える国民的大舞台で、こんな鬼ギャンブル…ほかに真似できるリーダーなんていますか?って話である。
弁解しない。すべて俺の責任でやるんだ―。ブレない覚悟を感じるから選手は西野についていく》
スポーツ報知の『仙ペン』(仙道学編集委員が執筆)は、
《西野監督の心中を思うと背筋が凍る》
《もし裏目に出てしまったら。卵を投げつけられるだけではすまない。というか帰国できるのか。亡命、そして死して屍(しかばね)拾う者なし……というのは大げさだけど、何かすごい勝負根性を見せられた気がする》(6月30日)
と書いた。
デイリーと報知の名物コラムは「ブレない覚悟」「勝負根性」に感心している。その向こうに阪神と巨人の現状がついつい見えてしまう。