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「一緒に東京五輪を目指そうや!」
男子バレー福澤達哉を動かした言葉。
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph byNaoki Nishimura/AFLO SPORT
posted2018/06/12 10:30
全日本男子チーム最年長となる31歳の福澤。2年ぶりに代表に復帰した。
引退は逃げじゃない――とはいえ。
バレーボール選手としてのキャリアを終えても、東京五輪のワールドワイドオリンピックパートナーであるパナソニックの社員として、五輪の中枢業務に携わることもできる。選手としては縁がなかったのだとしても、それも自分の人生ではないか――。
逃げるわけではなく、新たな形で五輪と向き合うことで自身のキャリアに区切りをつけようとも考えた。
だが、100%そう思うか、と言われればそうではない。くすぶる思いを突き動かしたのは、清水だった。
2016/17シーズンの最中、体育館内の部室で清水が切り出した。
「一緒に東京五輪を目指そうや」
長い間共にプレーしてきたからこそ、五輪を目指すことがどれだけ大変で、どれほどの覚悟が必要かは言わなくてもわかり合っている。あえて、互いの感情やこれから進むべき道について話すことはなかったが、ストレートな言葉は福澤の胸に刺さった。
「自分の中でもずっとモヤモヤしていたんです。その一番痛いところを突かれたな、と。やるなら、できるところまでやりきるしかないな、とその時に思いました」
清水と福澤の関係は「特別」。
同じ歳で、友人で、チームメイトという単純なものだけでなく、清水と福澤の関係は「特別」と、パナソニックのミドルブロッカー、白澤健児は言う。
「普段からずっと一緒にいるわけではないけれど、他の人に言われても聞かないことを清水に言われれば福澤は聞くし、福澤に言われれば清水も聞く。それだけ信頼し合っているし、あの2人にとって、それぐらい『オリンピック』っていう存在が大きなものなんですよね。僕らもずっと、2人がそれだけ努力をする姿を見て来ましたから」
1つ1つ設計図を描くように、五輪へ続くステップを考える。まずは五輪を2年後に控え、世界選手権が開催される今季、代表に入り、残り続けること。
決して大げさではなく、すべてをかける覚悟で臨んだ2017/18シーズン。
それは、予期せぬ幾多もの出来事と向き合い、乗り越えなければならない苦しい戦いだった。