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「一緒に東京五輪を目指そうや!」
男子バレー福澤達哉を動かした言葉。
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph byNaoki Nishimura/AFLO SPORT
posted2018/06/12 10:30
全日本男子チーム最年長となる31歳の福澤。2年ぶりに代表に復帰した。
「人間って、誰かのために、と思うと違う力が出る」
2月18日、JTサンダーズ戦。第1セットの序盤、スパイク時の着地で体勢を崩した清水が負傷。激痛にうめき声をあげ、起き上がることもできない清水の姿を見て、その怪我が決して小さなものではないことを瞬時に悟った。
起きてしまったことは仕方ない。とはいえ、前年に右足首舟状骨疲労骨折の治療とリハビリに必死で取り組んできた清水の姿を近くで見て来たからこそ、なぜあいつが、と思わずにいられない。
清水のことを聞かれても「彼の代わりはいないので」と言葉少なに答えるだけだったが、プレーや振る舞いを見れば、背負う覚悟が変わったことがわかる、とパナソニックの川村慎二監督は言う。
「人間って、誰かのために、と思うと違う力が出るんですよ。そういう思いが今季の福澤からすごく伝わってきたし、清水と一緒に何が何でもオリンピックを狙うんだ、という思いも強い。
若い頃は『今年がダメでも来年』という甘さがあったかもしれないけれど、今は違う。崖っぷちでよく耐えた。その頑張りが、今の姿につながっているんだと思います」
31歳での選手復帰だが異論は無い。
若返りを図る全日本の中で、31歳の福澤が2年ぶりに返り咲く。
パナソニックで優勝し、シーズンを通しての活躍が評価されたこと。そして今季全日本男子が重視するバックアタックを得意とすることも選考理由であり、異論はない。加えて、五輪出場経験のあるベテランの復帰、といえば聞こえはいい。
だが、生半可な覚悟で立てる場所ではないことは、誰よりも福澤自身が理解している。