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「一緒に東京五輪を目指そうや!」
男子バレー福澤達哉を動かした言葉。
posted2018/06/12 10:30
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph by
Naoki Nishimura/AFLO SPORT
日本代表として、こんなに楽しそうにプレーする姿を見るのは、何年ぶりだろう。
福澤達哉が日の丸をつけ、コートに立つのは2016年以来。当時見たのは、リオデジャネイロ五輪の世界最終予選で日々緊迫した空気の中、果たすべき自分の役割すら果たせず、悔しさを静かに噛み締めうつむく彼の顔。目にはうっすらと、涙を浮かべていた。
あれから2年。
今季から新設され、世界各国を転戦するバレーボールの国際大会「ネーションズリーグ」。6月8日から10日まで3日間にわたり大阪で開催された国内初戦。ブルガリア、ポーランドにストレートで敗れ、迎えた第3戦。
2セットをイタリアに取られた第4セット、自らのブロックポイントで8-5とリードを広げると、福澤達哉は満面の笑みを浮かべ、俺のブロックだ、とばかりに左手の手のひらを正面に向け、三度、上から下へ。
「今日あかんかったら、もう俺はあかんやろ、って思ってコートに入りました。だから少し、無理矢理じゃないですけど、逆にピリピリするのではなく気持ちの余裕を持たせるようにしたんです。若い西田(有志)に乗っかって、いい雰囲気でできました」
目の前の1戦、1点に必死で毎日しんどい。そう言いながら見せた表情は、充実した、いい笑顔だった。
「先が見えないし、『今年で終わりかな』と」
中央大4年時に北京五輪に出場を果たした後、同じ歳の清水邦広と共に日本代表のエースとしてロンドン、リオデジャネイロ五輪を目指すも、出場は叶わず。目標を失ったリオデジャネイロ五輪最終予選後、一度は現役引退も考えた。
「先が見えないし、『今年で終わりかな』と思っていました。キャリアの終わり方、アスリートの引き際って一番難しいじゃないですか。どこで終わらせるか、いろんな選択肢を考えている時、僕は客観的に将来を見て、どこに一番メリットがあるかを考えていました」