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Bリーグファイナルで圧巻の25点差。
王者アルバルクはいまだ進化途中。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byKiichi Matsumoto
posted2018/05/28 17:50
アルバルク東京をBリーグ王者に導いた田中大貴。MVPにふさわしい自在のプレーぶりだった。
コントロールできる部分をコントロール。
アルバルクは勝ち星を伸ばせず、4月になると東地区での首位の座をジェッツに明け渡すことになった。当時を正中はこんな風に振り返る。
「栄光の手前のところにこそ苦しく、厳しい時間帯があると思います。歯がゆさを感じながら戦い、そこで順位が変わることはありました。だけど僕たちは順位にこだわらなかったし、コントロールできる部分をコントロールしようということでやっていましたから」
そして「コントロールできる部分をコントロールする」という言葉に2つ目のキーワードがある。
ファイナルでは前半を10点差で折り返したものの、3Qの残り4分を切ったところで、5点差に詰め寄られ、相手ボールで攻撃が始まる苦しい場面もあった。しかし、MVPに輝いた田中は、チームメイトのジャワッド・ウィリアムズがチームにかけた言葉が支えになったと証言する。
「『スコアボードは見るな。目の前の1つのポゼッションを全力でやって、試合が終わったらスコアボードを見ろ』とジャワッドがチームに言ってくれたので。それで自分もすごく安心しましたし、みんなが目の前のことに集中してやれたんじゃないかなと思います」
相手との得点差に意識を向けても仕方がない。全力を注ぐべきは、自分たちがコントロールできることだけ。良いオフェンスと良いディフェンスをするにはどうしたらいいかに、フォーカスできたところにチームの強みがあった。
「次のシーズンに向けての大事な1年」
パヴィチェビッチHCは旧ユーゴスラビアの出身ながら、父親が地震関係の仕事をしていたこともあり、日本に幼い頃から興味を持っていたという。実際に、村上春樹の本も好きで、来日前に読んでいたほどだ。そんな彼は、3月にはこんな風に語っていた。
「我々は今シーズンの頭から200回以上、たくさんの練習をしてきました。最初は身体づくりから入ってきたくらいですから。実は今シーズンは、次のシーズンに向けての大事な1年としていて、2シーズン目の8月には違うものになっているはずです」
勝利を追い求めるが、チームを成長させることに照準を合わせていた。にもかかわらず、就任1年目でアルバルクはタイトルを獲ったのだ。