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政治、音楽、そしてサッカーが融合!
世界一特別なクラブ、リバプールの謎。
text by
フィリップ・オクレールPhilippe Auclair
photograph byAlexis Reau/L'Equipe
posted2018/05/24 11:20
過去には乱暴なファンも多かったリバプールだが、現在はほとんどいなくなり、安心して観戦できるようになったそう。
マンU、レアル、バルサ……と何が違うのか?
たしかに同じことは、マンチェスター・ユナイテッドやレアル・マドリー、バルセロナ、バイエルン、セルティックなどにも言えるかもしれない。
それでも――繰り返すがリバプールには「特別な何か」――マンチェスター・ユナイテッドやユベントスの熱烈なサポーターであっても、2番目、3番目に好きなクラブとして決勝の日には応援したくなるような「何か」がある。
それはいったい何であるのか?
ひとつのパラドックスから話を始めよう。
実はリバプールは「民衆のクラブ」ではない!?
誰でも知ることだが、リバプールは「民衆のクラブ」ではない。
その称号は、グディソン・パークに本拠を置くもうひとつのクラブ(エバートン)に与えられたものである。
19世紀の終わりにリバプールは、アンフィールドの所有者であり不動産業などで財を成した実業家のジョン・ホールディングにより、エバートンから分離独立する形で創設されたのだった。
アンフィールドに隣接するパブとホテルを兼ね備えたサンドンで、エバートンのボードメンバーたちの侃々諤々の議論からリバプールFCは生まれた。
現在のクラブ所有者により場所を移された小さなギャラリーを覗けば、リバプールが地域のコミュニティによってではなくひとりの人物――ジョン・ホールディングにより設立されたことがよくわかる。
そしてもうひとりの人物――ビル・シャンクリーが1959年に監督に就任してから、クラブはわれわれが良く知る今日の姿に変貌を遂げたのだった。