Jをめぐる冒険BACK NUMBER
“大槻組長”は岡ちゃんに似ている。
浦和を救った暫定監督の素顔と手腕。
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byGetty Images
posted2018/04/24 17:00
ファンの垣根を越えて愛された大槻毅暫定監督。ヘッドコーチとして浦和を支える今後にも注目だ。
「ミーティングが楽しみに」(西川)
また、4月2日に暫定監督に就任してからわずか3週間、カップ戦も含めて6試合で4-4-2、3-4-1-2、3-4-2-1と3つのフォーメーションを使い分け、4勝2分の無敗でチームを見事に立て直した。その手腕についてGKの西川周作はこう語る。
「毎試合細かく分析してくれて、分かりやすく伝えてくれた。短く、分かりやすく、はっきりしているので、みんなもミーティングに聞き入って、楽しみにしていました。役割もはっきりしていたから、全員で意思統一ができたし、時間ごとに戦い方も変えていたんですけど、そこも明確でしたね」
こうしてピッチ内で選手の迷いを取り除くと、セルフプロデュースによって確立させたキャラクターで注目を集め、チームを取り巻く雰囲気やスタジアムを覆う空気を、瞬く間にポジティブなものへと変えていった。
札幌戦では、大槻前監督が表紙を飾ったマッチデー・プログラムが完売した。広報担当者は「ACL決勝では完売しましたけど、普通のリーグ戦だといつ以来だろう」と驚いていた。それだけサポーターにも愛されたという証だろう。
オリヴェイラ新監督にも共通点が。
価値のある財産を残し、バトンは大槻前監督からオズワルド・オリヴェイラ新監督へと託された。チームの現状をよく知る大槻前監督がヘッドコーチとしてトップチームに残ったのは大きいが、新監督も名うてのモチベーターであり、優秀な分析家と、両者に共通点があるのも大きい。
2007-2011年に指揮を執った鹿島アントラーズ時代には、指揮官自ら映像を見ながら相手チームの特徴を分析し、その内容をミーティングで説明することが恒例だった。また、選手たちに情熱的に語りかけ、大きな試合の前には選手の家族からのメッセージビデオをサプライズで準備したり、コンディション不良に苦しむ選手を思い、その選手の前で涙を流したこともあったという。