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CLベスト8進出なのに……何故?
マガト監督、シャルケ解任劇の謎。 

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ミムラユウスケ

ミムラユウスケYusuke Mimura

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photograph byItaru Chiba

posted2011/03/29 10:30

CLベスト8進出なのに……何故?マガト監督、シャルケ解任劇の謎。<Number Web> photograph by Itaru Chiba

シャルケ解任直後に、古巣のヴォルフスブルク監督に就任したマガト。降格圏内のチームを救うことができるか

 異常な事態である。

 シャルケはクラブ史上2度目となるチャンピオンズリーグベスト8進出を決めた。しかし、チームを率いていたマガト監督は、歓喜のちょうど1週間後、3月16日に解任されてしまったのだ。

 さらに、その2日後には2009年にリーグ優勝に導いたヴォルフスブルクの監督に、再び就任することになった。もっとも、ヴォルフスブルクの監督に就任したのは、シャルケを去ることが決まってからコンタクトがあったからなのだが。

 実は、バレンシアとのCL準々決勝の2ndレグが行なわれた日、テニース会長は一つの書類を携えて、スタジアムへ訪れていた。その書類とは、マガトを解任するための法的手続きに用いられるもの。バレンシアに敗れた場合には、その場でマガト解任が決まるはずだったのだ。

 シャルケはCLでの成績とは対照的に、リーグでは10位に沈んでいる。マガト解任の表向きの理由は、リーグ戦での成績不振だ。実際、昨年11月にカイザースラウテルンに0対5で敗れたあとにも、解任直前にまで追い込まれた。このときは、緊急の役員会が開かれて、すんでのところで解任を免れている。

電撃解任劇の根本にはテニース会長との根深い対立が。

 実は、解任の理由はそれほど単純なものではない。

 確かに、リーグでは思うように成績が伸びずに、マガト監督の解任を求める声は高まっていた。それでも3月2日にはアウェイでバイエルンを下してドイツカップ決勝進出を決め、その1週間後に行なわれたCLではベスト8進出を決めた。2つのカップ戦の成績により、ファンの態度も少しずつ変化を見せ始め、解任を求める声はおさまりつつあったのだ。実際、バレンシア戦の終わったあとにはスタジアムのメインエントランスにつめかけて、マガト続投を求めるファンの姿もあった。

 解任の理由はいくつかある。

 最も大きかったのが、テニース会長との対立だ。補強方針をめぐって、マガト監督とは意見の相違が絶えなかった。

 クラブは前経営陣のもとでの放漫経営がたたり、慢性的な資金不足に陥っている。そのため、今季開幕前には年俸の高い主力選手たちを放出せざるを得なかった。しかし、それでは満足のいく戦いが出来ないと考えたマガトは、テニース会長に直接言わずにメディアを使って自身の望む補強の正当性を訴えた。マガトは役員にも名を連ねていたが、最終的にはテニースの首を縦に振らせないといけないからだ。

 結局、マガトの望み通り、夏の移籍期限間際にフンテラールやフラードを補強することになった。とはいえ、この頃から両者の溝は埋めがたいものになっていく。

 また、テニース会長はマガトに収賄の容疑がかかっていることを匂わせている。

「現時点では詳しいことはまだ話せない」としながらも、告訴も辞さない構えだ。

【次ページ】 深刻な亀裂が生じていた選手たちとの信頼関係。

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