“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
J注目の逸材、前橋育英のFW榎本樹。
“選手権優勝弾男”の評価をぶち破れ!
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2018/03/19 17:30
劇的な決勝ゴールを決めて伝説となった榎本樹。しかし、それは彼のサッカー人生の始まりに過ぎない……。
あのゴールで評価されるのは嬉しいが……。
ずっと付いて回る「選手権優勝弾男」の評価。
それは多分、これからも長らく付いて回る。だが、同時に自分に向けられた厳しい目にもなりうる。
「今年は絶対に結果を残さないといけないんです。選手権で優勝したり、試合できっちり点を獲るなど、今年活躍しないとより一層それだけのイメージから抜けられなくなる」
その強い覚悟とは裏腹に、今、彼は苦しみの最中にある。
2月11日の新人戦決勝・桐生第一戦。
今年、前橋育英と同じプリンスリーグ関東に昇格し、今年も県内最大のライバルとなる難敵を相手に、立ち上がりから徹底マークに苦しむ榎本の姿があった。
開始早々に相手選手が退場し、前橋育英は数的優位に立ったが、結果として最後まで相手のゴールをこじ開けられず、逆に先制点を献上し、0-1の敗戦となった。
「立ち止まって考え直す良い時間かも」
この試合、ピッチ上の彼の表情は常に険しく、ボールが足につかなかったり、シュートを打ち切れないなど、明らかに苛立ちを隠せていなかった。
「自分が決めないといけないのに、結果を出せなかった。本当に悔しい」
その新人戦決勝から約1カ月後の3月3日。前橋育英が主催となって同校サッカー部グラウンドで開催されたプーマカップでは、強豪と戦う仲間をピッチサイドで見つめる彼の姿があった。
「桐生第一戦で負傷したんです。ずっとサッカーができていなくて、歯がゆい気持ちはあります。正直、個人的にはちょっと出遅れた感があります。でも逆に一度立ち止まって考え直す良い時間なのかも知れません。
この期間を有意義に過ごすために今は身体作りをしています。未だ当たり負けとかするし、今年はかなり相手も自分に強く来るので、復帰したらもう誰にも屈しない強い身体で戦っていきたい」
その表情からは彼なりに苦悩を重ねたことは良く分かった。