バレーボールPRESSBACK NUMBER
プロクラブ宣言に超高額チケット。
バレーの異端児・ヴォレアス北海道。
text by
市川忍Shinobu Ichikawa
photograph byVOREAS HOKKAIDO
posted2018/03/08 07:00
V・チャレンジリーグII男子 最終節の奈良NBKドリーマーズ戦を3-0のストレートで勝利。勝率で上回ったヴォレアスが優勝を果たした。
従来の方法で成功したクラブはほぼない。
池田は続ける。
「ヴォレアスを発足した2016年法人化、2017年株式化したばかりのころは、身の丈にあった方法でやっていました。従来のチームのように、少しずつ成績を上げて、何年かかけてVリーグに昇格していこうと考えていたんです。当時は資金力もないし、ノウハウも自信もなかった。だからそれでいい、弱くてもみんなに愛されるチームになろうと思っていて、実際に過去にはそういう発言もしていました」
しかし心境の変化が起きた。
「あるとき、これって出口のないトンネルなんじゃないかと思えたんです。従来の方法で、成功した事例はほぼないといっていい。
たとえば広島カープのように、何十年もかければ実現するかもしれない。しかし、それでは運営の体力がもたない。既存の各競技団体のクラブチームや、バレーのクラブチームが苦戦しているのを見たときに、大きく変えていかなければだめだと思いました」
これまでにないチームを生み出す。その発案をもとに池田と、パートナーであるプロデューサー兼デザイナーとの2名でシンボルマークやロゴデザイン、スローガンなどチームのコンセプト作りから考えた。
欧州に長く息づくスポーツの文化を思い描きながら、ディスカッションを重ね、構想を練るうちに「スポーツが地域の文化になるためには、ブレないコンセプトが必要」という結論に達する。こうして北海道に初めて、プロのバレーボールチームが誕生した。
プレミアの優勝決定戦より高いチケット。
もうひとつ話題となったのがホームゲームのチケットの価格設定だ。
ヴォレアス北海道の観戦チケットはSS席が10000円。S席が8000円。最も価格の低い2階自由席で2500円(すべて前売り価格)。Vプレミアリーグ優勝決定戦のチケットでも最高額が9800円であるのに対し、3部リーグの試合としては大胆な価格設定である。池田は説明する。
「ライブエンターテイメントのひとつとして考えたときに、まず、映画館で映画を鑑賞する価格を参考にしました。映画館で見る映画と、生で観戦する試合を比較して、いちばん安いチケットを映画館より少し高い価格にしました。あとは、嵐のコンサートはいくらくらいだろうとか、これよりは高いはずだとか、いろいろな分野のチケット料金を調べました」
その結果、チケットの価格が決まった。チケット代金を発表した直後は、前例のない価格設定に「高すぎる」という意見も多く寄せられた。しかし、ホームゲームを1試合、2試合と進めるうちに、チームに届く声は変わっていった。