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メダルを逃したことで気づけた真実。
竹内智香「オリンピックの価値って」
text by
西川結城Yuki Nishikawa
photograph byNaoya Sanuki/JMPA
posted2018/03/03 08:00
日本人離れしたスポーツ観を持つ竹内智香。フェアにフラットに、彼女は次の戦いをもう始めている。
メダルを逃したことで深く気づいたこと。
帰国後の会見や解団式に参加し、メダリストたちがもてはやされる。それを横目で見ながら、竹内は4年前と今の自分の違いを、心の中で冷静に受け止めていた。
「メダルを取れた人と、取れなかった人。その差はすごく大きい。もちろん私が今回メダルを取っていても、今話したことは理解すべきだし、その感覚は誰もが持っていないといけないことなのかもしれない。でも私は今回の立場になって、やっぱり深く気づけたのかなと。自分のこれまでを、初めて自分でリスペクトしようかなと思います」
3月3日、再び次の勝負の場所へ。
気がつけば出国の時間が近づいていた。保安検査場へと急ぐ。行き先はトルコ。さらにスイス、ドイツと転戦は続く。
4年後の北京五輪を目指すのか。まだ決め兼ねているが、その目標は現実的ではないという。
「オリンピックは、ある意味中毒になるようなところです。出るとまた次、となり、永久に出ていたくなる。同時に、4年間また歩み続ける難しさも一番理解できた今大会でした。割合で言うと、次のオリンピックはもう目指さないだろうなという考えの方が高い。
でも40代で現役のクラウディアは、1年1年戦って、その先にオリンピックがあるという戦い方をしている。そういう競技人生もいいかな、とも思いましたね。
試合はすぐに来る。タフな世界だなと感じます。でもとりあえず今は、すぐに始まるW杯のレースをすぐにでも滑りたいと思えていますから」
3月3日、竹内はトルコの雪山で、再び勝負の瞬間に身を投じる。
彼女が大好きと言ってやまない4年に一度の大舞台が終わった。そこに立てた喜び、思うように状態が上がらないことへの怒り、金メダルを逃した哀しさ、そして、それでも最後は「最高の場所」と言えた楽しさ。
まるで生き方のように、喜怒哀楽の全てが詰まった竹内の平昌五輪が、終わった。