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ボールボーイ事件、頷く大杉漣さん。
馬渡和彰、徳島での後悔を胸にJ1へ。
text by
石倉利英Toshihide Ishikura
photograph byJ.LEAGUE PHOTOS
posted2018/03/02 08:00
時が経てば、躓いた過去も未来へのステップとなる。馬渡のような選手こそ、サポーターは応援するのだ。
「鳥取に加入したときからいつかJ1で」
強い決意をピッチ上で示す馬渡のプレーはその後、さらに迫力を増した。シーズンを通してJ1昇格を争った徳島で、終わってみれば39試合に出場して4得点9アシスト。チームは惜しくも昇格プレーオフ進出を逃したものの、キャリア最高のシーズンを過ごした。
その活躍が、サイドアタッカーの補強を目指していた広島の目に留まり、獲得オファーが届く。
「徳島の強化担当の方、リカルド・ロドリゲス監督は、これ以上ないほど高く評価してくれました。迷惑をかけたときに自分を支えてくれたクラブを、昇格させずに去るのは……という思いも浮かびました」
それでも馬渡は、広島への移籍を決断する。ついにめぐってきたチャンスを、逃すわけにはいかなかった。
J3からJ2、さらにJ1へ。それは馬渡が初めから願っていた成り上がり、ステップアップのキャリアだった。
「鳥取に加入したときから、いつかJ1でプレーしたいと強く思っていました。徳島には本当にお世話になりましたが、J1のクラブからオファーが来たんです。短いサッカー人生で、後悔はしたくなかった」
城福新監督に認められ、メンバー入り。
新しく城福浩監督が就任した広島は始動後、タイ、宮崎と場所を移しながらキャンプを行った。馬渡は練習試合では左右のサイドバックでプレーし、持ち味の積極的なオーバーラップでチャンスを演出。武器の一つである直接FKからの得点も決めるなどアピールを続け、ベンチ入りメンバーに名を連ねた。
2月24日、エディオンスタジアム広島での、北海道コンサドーレ札幌との開幕戦。3人の交代枠が使われたが、馬渡には最後まで声が掛からなかった。
1-0で逃げ切ったチームの勝利が喜ばしい一方で、試合後は浮かない気分だった。CB千葉和彦の負傷で交代枠を1つ使った影響もあっただろうが、逃げ切りを狙う展開で出番が来なかった事実からは、城福監督も指摘している守備力という課題が浮かび上がる。
「試合後、みんながワイワイしているときに監督にポンと肩を叩かれて、『来週もあるから良い準備をしてくれ。頼むぞ』と言われました。試合に出られなくて悔しかったから、顔に出ていたんでしょうね」