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高校生・福田湧矢をクルピが大抜擢。
ガンバが探す次の「第1ボランチ」。

posted2018/03/01 11:15

 
高校生・福田湧矢をクルピが大抜擢。ガンバが探す次の「第1ボランチ」。<Number Web> photograph by Getty Images

稲本潤一、宇佐美貴史、井手口陽介……G大阪は若手が抜擢され、中軸となる伝統がある。福田もその系譜を継げるか。

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下薗昌記

下薗昌記Masaki Shimozono

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 ほんの53日前、全国高校サッカー選手権の2回戦で敗れ、涙に暮れていた高校3年生は、Jリーグの開幕戦のピッチに立っていた。

 ガンバ大阪のルーキーではあるものの、立場上はまだ卒業式を迎えていない東福岡高校の生徒である福田湧矢。2月24日の名古屋戦で、高体連出身の新人としてはクラブ史上初となる開幕スタメンを勝ち取ると、キックオフのホイッスルを聞いたわずか3秒後、名古屋の元ブラジル代表に猛然とチェイスを仕掛けていた。

「サッカーはびっくり箱」

 福田をピッチに送り出したブラジル人指揮官の母国で、決まり文句のように言われる言葉だ。パナソニックスタジアム吹田で開幕戦を見守った28681人のサポーターにとって、彼の抜擢は紛れもなくサプライズだったに違いない。

最初の目標はU-23の試合出場が……。

 まだ小学4年生だった福田が、昨今の小学校では定番となった「2分の1成人式」で公言した夢は、「東福岡の選手になって全国大会で優勝。そしてガンバ大阪に入団する」。

 小学生の頃から、サッカー選手として確かな未来図を描いていたはずの彼だが、開幕スタメンはさすがに予想さえしていなかったという。福田は言う。

「最初はまず、(ガンバ大阪)U-23で試合に出ることを目標にしていた」

 三流の漫画家でも描かないような、出来過ぎたストーリーに満ちたこのプロデビュー戦。実のところ、レヴィー・クルピ監督にとっては苦肉の策だった。

「ボランチで起用されるのは想像しなさすぎでした。自分自身が一番驚いている」

 と福田は高校1年生で出場した和歌山国体以来となるボランチでのプレーに戸惑い気味な笑顔を見せていたが、本来、彼はトップ下を主戦場とする攻撃的MFである。

 大胆なコンバートの背景に見え隠れするキーワードは「イデグチ」だ。

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