マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
SB二軍キャンプの有望株と非情さ。
今宮健太に加えてまたライバルが。
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byKyodo News
posted2018/02/18 07:00
休日には新人の“名前売り”イベントがあるが、若手がキャンプ中に実感するのは厳しい競争の掟だ。
“実力一軍”はいてもらわないと。
フェアグラウンドでバッティング練習が始まると、ファールグラウンドでは、内野手がノックを受ける。
牧原大成(8年目、熊本・城北高)、古澤勝吾(4年目、九州国際大付高)に川瀬晃(3年目、大分商業高)。いずれも、ファームのレギュラークラスの内野手だ。
「たとえば内野手なら、彼らが一軍の“スタンバイ”ってことになりますから、いつでも上に上がれる状態でいてほしいわけです」
しかし、そこは“人間”である。
同じポジションに、あの選手とあの選手がいて、そこに今年は横から西田が……普通なら“計算”をして、希望の光を感じたり、逆に失望したり、絶望したり。
普通なら、そうであろう。
「チラッと出ることがあるんです、練習を見てると、ちょっとした所に。あと1歩の打球なのにあきらめてしまう、基本動作の反復のような練習でキレが見えない、捕って投げて……次の瞬間に、視線がつい下を向く。ほんのささいなしぐさに、気持ちはどうしても出ます。それが見えたら、そこでちょっと言葉をかけてあげて。自分も経験ありますけど、どこか弱くなっている時に声をかけてもらうって、すごく大きな励みになるもんですから」
長くファームで懸命に練習を積んで、何年もコンスタントに好成績を続けながら、なかなかチャンスを得られない。それでも、あきらめずに努力を続ける牧原大成のような選手には頭が下がるという。
「彼だって、折れかかった時期がないこともなかった。でもそこで踏みとどまって、今年もああやって、若いのと一緒になって汗を流している。ほかのチームなら、一軍でもっと活躍できる力は十分ありますよ、牧原は。でもウチとしても、ああいう“実力一軍”の選手はいてもらわないと困るんです」
見てくださいよ、あの打球で……。
2カ所のバッティングケージから、威勢のよい打球が右に左に飛んでいく。
ライト方向へすばらしいライナーを立て続けに弾き返していたのが、2年目の三森大貴(青森山田高、内野手)。レフトへ雄大な放物線を描いている豪快なスイングが、3年目の黒瀬健太(初芝橋本高、内野手)だ。
「見てくださいよ、あの打球で、ウチだとまだ二軍と三軍行ったり来たりなんです。あのレベルの打球を打てる選手なんて、社会人にだってそうはいない。それより上を探してこなきゃならない僕らもたいへんですけど、闘っている選手たちのほうがね、ずっと……」