唯一の味方は担当スカウトだが。

　ソフトバンクの育成からは、千賀滉大（愛知・蒲郡高、8年目）がエース格に台頭し、甲斐拓也（大分・楊志館高、8年目）がレギュラーマスクを獲得している。

「加治屋（蓮、JR九州、5年目）さん、今のボール、よかったですよ！　今のボール、強かった！」

　ファームの投手たちが横に並んで投げるブルペンで、ひと際気合いの入った声で先輩投手を鼓舞する捕手がいた。

　やはり、育成で入って4年目の堀内汰門（埼玉・山村国際高）は、ミットで受けたその1球1球に“答え合わせ”をしながらボールを返す。

　体格で、バッティングで、肩で目立てないのなら、気合いと元気と姿勢で差をつけてやる！　ならば、受けるボールの1球1球が勝負だ！

　若い心意気が伝わってくる。

　以前、ある球団の若い選手がこんなことを言っていた。

「プロに入って、チームメイトって言ったって、実際は周りじゅうが“敵”みたいな中で、いちばん身近な“味方”に感じるのが担当してくれたスカウトの人なんですよ。ときどき、メールで『ガンバレ！　もうちょっとだぞ！』って励ましてくれて、ありがたいんですけど、次の年になると、その人が担当した新人が同じポジションに入ってきたりするんです。それも、自分に対する“励まし”だと思わなくちゃいけないんですかね」

　投げたようなもの言いで薄く笑ったその選手は、その年のオフで球界から消えた。

　キャンプも中盤に入って、今年も一軍、二軍の“振り分け”が始まっている。