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名波、森保両監督が「待ってるぞ」。
小川航基、膝の恐怖を消すために。
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byJ.LEAGUE PHOTO
posted2018/02/12 07:00
磐田、東京五輪の得点源として期待を一身に背負う小川。だからこそ焦らず、全快の形でピッチに戻ってほしい。
「公式戦になると膝のことを忘れてしまうかも」
「今は人と当たる恐さはないです。相手とぶつかった時、体がブレないか、膝のクッションを意識しながら余裕を持ててプレーできています。ただ、斜め後ろに下がりながらの着地とかはすごく注意しています。今は膝のことを頭に入れているので、ちゃんと着地できていると思うんですよ。でも体が動き始めてきて、公式戦になるとアドレナリンが出て膝のことを忘れてしまうかもしれない。そういう時がちょっと怖いかなと」
負傷前の感覚に戻すには、まだ乗り越えるべき山は大きい。とはいえ小川は完全復帰についてそれほど焦ってはいないという。
「キャンプで最高のコンディションに持っていく、開幕からガンガン行けるようにとは思っていません。無理せず、30~40%ぐらいまで自分のコンディションを戻せればいいかなと思っています。開幕後も地道にやって……時期は何とも言えないですけど、膝と相談しながらですね」
こう語る表情には余裕が感じられる。それはリハビリ期間で得た成長もあるからだろう。
昨シーズン当初は「筋肉がつきにくいんですよ」と悩んでいたが、昨年と比べて明らかに体の厚み、下半身の安定感が増した。リハビリ期間中、筋力不足を解消するために相当の筋トレをこなしてきた。その努力を成果として見せるのはもう少し先になりそうだが、完全復帰すれば“できる雰囲気”を感じた。
名波監督からは期待も、先発確約ではない。
その一方で磐田はFWの先発争いが激しさを増している。
昨季14得点を上げた川又堅碁を軸にアダイウトンも健在で、熊本から移籍してきたモルベッキ、筑波大のエースとして活躍した中野誠也らも加入した。名波浩監督は「川又との2トップを期待している」と話しているが、「はい、どうぞ」と指定席が与えられるわけではない。
「レギュラー争いはライバルがたくさんいますし、開幕からポジションを取れるとは思っていませんが、自分は他のFWにないものを持っているので、やれる自信はあります。自分と同じような怪我で復帰した(小川)大貴くんは昨年、ルヴァン杯からちょこちょこ試合に絡んだので、自分も膝の状態を確認しつつ、名波監督と話をしながらやっていきたい」