箱根駅伝PRESSBACK NUMBER
名監督だけど気分は「友達」!?
箱根4連覇目指す青学・原監督の心。
text by
中村計Kei Nakamura
photograph byAFLO
posted2018/01/01 09:00
チャラチャラして見えるようでいて、裏では誰よりも努力しているのが……青学イズム。
革新的な指導法は摩擦を生むが、現代的でもある。
原の指導法は大学スポーツ界にとっては、ときに革命的と言っていいほどに衝撃的だ。
そのうちの1つが「ファン対応」である。
レース後は「ダウンやアイシングが終わってから」という大原則はあるものの、青学の選手は、積極的に写真撮影やサインに応じる。
神野はその意図を、こう話す。
「サイン下さいって言われたら、選手はやっぱりうれしいじゃないですか。他の選手よりもファンの数が少なかったら、その悔しさをバネにがんばるのが今の選手。そうやって、選手のやる気を引き出すんです」
しかし、慎ましやかなことこそ最上とする傾向が強い日本のアマチュアスポーツ界においては異端だ。そうした方針に、古い体質の人たちからは厳しい視線も注がれる。それでも、神野は「まったく気にしたことはない」ときっぱり言う。
「青学は、見えるところではチャラチャラしているように見えるかもしれない。でも、その裏で、どこよりも練習をしている自信がある。だから、何とも思わなかった」
練習量、門限、就活……選手の意識が高い青学。
青学は寮からグラウンドまでの道のり約5kmを、行きも帰りもジョグをしなければならない。往復で10kmだ。夏場、30km走をしたときなどの帰り道は、一色でさえ「たまに歩いた」というほど体にこたえる。
青学の各選手の月間走行距離は700km~800km。しかし、ここに往復10kmのジョグは入れてはならないことになっている。このジョグぶんも加えたら、優にプラス200kmにはなる。これだけ走っている大学は、そうはない。
また、神野はこう続ける。
「門限があっても、他大学の人は、こっそり朝帰りしている人がいるという話をよく聞く。でも、うちは絶対にない。なぜ門限があるかを、みんな理解していますから。監督はいつも『俺が明日死んでも、変化なく続けられるチームを10年かけてつくってきたんだ』と言っていた。いち選手なら監督に言われなくても10時に帰ってくるのは当たり前だと思っている。それが青学です」
また、些細と言えばそうかもしれないが、普通の体育会系のクラブだと就職活動を理由に練習を休むのはどこか気が引けるものだが、青学にはそういう雰囲気はまったくない。
就職活動は、人生の一大事だ。それを原が理解しているためだ。