“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
選手権初戦敗退でも逸材1年生が!
興梠+岡崎型の草津東・渡邉颯太。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2018/01/05 11:55
滋賀県の選手権決勝では、まだ1年生ながらチームの主軸としてファイト溢れるプレーを見せつけていた渡邉。全国大会初戦で去るには惜しい逸材だ。
空中戦に強くスプリントを生かし、シュートも巧み。
メキメキと頭角を現した渡邉に、8月に大きなチャンスが巡ってくる。プリンスリーグ関西で出場機会をつかむと、第15節の近大附属戦でハットトリックを達成。一気にスタメンに定着をした。
その勢いに乗って迎えた選手権滋賀県予選。彼は強烈なインパクトを与えた。1トップを張った背番号24の渡邉は、驚異的なバネを駆使した空中戦の強さ、初速からスピードに乗ったスプリントを生かす。それと同時にボールもしっかりと収め、シュートセンスの高さも発揮する。彼が見せるピッチ上での異質さに、たちまち目を奪われた。
駆け引きも上手く、ワンステップや上半身の動きで、一瞬でマークを外し、裏への飛び出しやボールを受ける体勢を作り上げていた。その動きはゴールに直結するものだった。
プロ選手に喩えるなら、鵬翔高校時代の興梠慎三を見ているようだった。しなやかな身のこなしで、マーカーの背後を巧みに突く動きは躍動感にあふれているのだ。
しかも決勝戦の会場となった皇子山陸上競技場は大雨に見舞われ、ピッチ上は水浸しだった。にもかかわらず、彼は質の高いプレーを見せた。何より無名の1年生が決勝の舞台で臆さずプレーする姿には、大物感が漂っていた。
「僕は岡崎選手に憧れて、身体を投げ出して……」
0-0で迎えた後半アディショナルタイム、渡邉の驚異的なプレーが決勝弾に繋がった。左スローインから同サイドの味方にバックパスが渡った瞬間、渡邉はファーサイドにダッシュ。上がったクロスは若干高いかと思われたが、彼は完璧なタイミングでジャンプし、空中で身体を思い切り伸ばす。やや背後から来る難しいボールを最高到達点で頭に確実に捉えた。このヘディングはバーに直撃したものの、こぼれ球をMF上野広人が押し込んだ。
このゴールが決まった直後、タイムアップのホイッスルが鳴り響いた。
渡邉の驚異的な身体能力が劇的な決勝弾を導き、草津東が1-0の勝利を手にしたのだ。
「小学校の時からヘッドは自分の武器だと思っていますし、クロスに合わせるプレーだったり、何よりがむしゃらさが売りだと思っています。僕は岡崎慎司選手に憧れていて、ダイビングヘッドや身体を投げ出してでもゴールを奪う姿勢を見習っています。周りから比べて上手くないからこそ、もっと貪欲さや前への姿勢が必要なんです」