Sports Graphic Number SpecialBACK NUMBER
[天才のルーツ探訪]静岡の幸福な男たち
posted2023/02/17 09:02
今沢サッカースポーツ少年団。前列右から4番目が小野、前列左端が高木英大、後列右端がコーチの小野政喜。チームは今沢JFCという名前で現在も活動を続けている
text by

細江克弥Katsuya Hosoe
沼津市役所に勤務する高木英大は、実は、あまり乗り気ではなかった。
「今沢校区に住む上司がいましてね。近隣にある団地のカギっ子対策として、今沢小学校にサッカーチームを作ってくれと頼まれたんですよ」
社会人1年目。もちろん大学までサッカーに没頭していたとはいえ、「いきなり小学生の指導なんて」と腰が引けた。
「ただ、今になって思えば“だからこそ”だったのかもしれないなと。大義名分はカギっ子対策。監督である自分は指導者でも教育者でもなく市役所の職員で、勝つことより楽しむこと、“一人で”じゃなく“みんなで”を大切にしたかった」
今沢サッカースポーツ少年団(以下、今沢SSS)の発足から10年以上の歳月が過ぎた1988年のこと。相変わらずそんな心構えで子どもたちと向き合い続けていたからこそ、グラウンドの片隅に落ちていた原石に気づくことができたのだろう。
「チームが練習している校庭の隅っこで、じっとこっちを見ている子がいてね。『おいでよ』と声をかけたら、嬉しそうに輪に入ってきました。確か、リフティングをやらせてみたのかな。そうしたらもう、とんでもなくてね」
思い出し笑いにしては随分と臨場感のあるその表情から、受けた衝撃の大きさを読み取ることができる。
こちらは雑誌『Number』の掲載記事です。
NumberWeb有料会員になると続きをお読みいただけます。
残り: 4850文字
NumberWeb有料会員(月額330円[税込])は、この記事だけでなく
NumberWeb内のすべての有料記事をお読みいただけます。
