マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
社会人野球の“ステップ”もアリ!?
宮台康平に勧めたい険しい我慢の道。
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byKyodo News
posted2017/10/25 17:15
プロ入りすれば東大からは6人目となる宮台康平。運命のドラフトの日は近づいている。
神宮のネット裏には、10球団のスカウトがずらり。
神宮のネット裏には10球団が訪れていた。
同じ時刻に、保土ヶ谷(神奈川)では高校野球の「関東大会」が行なわれ、宮崎では「九州大会」が行なわれている。来季の高校球界を占う大きな大会が行なわれていたにも関わらず、スカウト部長が足を運んだ球団もいくつかあった。
それほどに、待ち焦がれる存在。これほど条件の揃ったサウスポー、今年のドラフトでは何人もいない。
雨で2日流れた23日の東明戦1回戦。
第1試合の立教と入れ換わりにグラウンドに現れた東京大の選手の中で、最初にキャッチボールを始めたのが宮台康平だった。
足が弾んでいた。待ちに待ったこの日……投げたい思いがはじけていた。
三塁側ダグアウトの上から、目の前に宮台を見る。柔らかい身のこなしは変わっていない。気持ち、重心を沈めて投げているか。
以前は上体の抜群のしなりにまかせて投げていたが、下半身の体重移動にも仕事を担わせて、そのぶん上体の負担を軽くさせてあげようとしているのか。見ていて気持ちのよいなめらかなフォームだ。
ピッチングセンスは優秀で、“野球カン”の鋭さも。
本人も気分良さそうに投げている。そんなふうに投げているのだが……もうひとつボールが来ていない。30mほどの間隔をとったキャッチボール。その距離なら、宮台のボールはもっと捕手のミットをはね上げていたはずだ。捕球の瞬間、捕手が思わず顔をそむけるような勢いがあったはずだ。
ブルペンに場所を変えても、ボールの“生き”にそんなに違いはないように見えていた。実戦のマウンドはだいじょうぶなのか。
元来、ピッチングセンスは優秀で、ストレートが今ひとつの日にはスライダーとチェンジアップの緩急でしのいでしまう“野球カン”の鋭さも持ち合わせている。試合を作ることに関してはそんなに心配していないが、プロを目指す宮台にとって、今日は最終の実技試験。プロがしっかりと確かめたいのは、彼が好調子の頃の、あの快速球をどれぐらい取り戻しているのか。その一点に尽きるはずだ。