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鹿島で丸刈り流行、発端は曽ヶ端準。
あらゆるエピソードが男気だらけ。 

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池田博一

池田博一Hirokazu Ikeda

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photograph byJ.LEAGUE PHOTOS

posted2017/10/14 07:00

鹿島で丸刈り流行、発端は曽ヶ端準。あらゆるエピソードが男気だらけ。<Number Web> photograph by J.LEAGUE PHOTOS

クォン・スンテとの守護神争いは続くが、ピッチでもベンチでも曽ヶ端準の存在が鹿島に与える影響はいつだって大きい。

若いときはイライラしていた。しかし今は……。

「どちらかというと短気な方だから」

 今やどんな場面でもどっしりとゴール前で構え、チームに安心感を与える曽ヶ端だが、若い頃はそうではなかったという。

「若いときはイライラすることが多かった。得点が入らなかったり、味方のミスで失点したときなんかは思い切り態度に表すこともありました。でも、今はなくなった。冷静でいないと、判断を誤って失点やミスにつながることがありますからね。何試合も成功や失敗をたくさん経験して、自分の課題を改善しようと意識し続けてきたからこそ、克服できたんだと思います」

 すべては勝利のために。常に冷静にチームを見ることで、プレーはもちろんチームメイトとの関係にも余裕が生まれた。改善した課題が、今季より良い形で表れている。

正GKの座を争うスンテとも良好な関係を築く人間力。

 6月17日、J1第15節札幌戦での出来事だった。大岩剛監督就任以来、初のホームゲームでもあったこの試合。W杯最終予選で韓国代表に招集されていたスンテは、家庭の事情でチームへの合流が遅れていた。曽ヶ端は、この試合でリーグ戦6試合ぶりの先発出場。これまでスタメンの座を譲っていただけに、ポジションを奪うまたとないチャンスとも言える状況だった。

 にも関わらず、試合前にスタジアム入りしたスンテは曽ヶ端のウォームアップを手伝う。曽ヶ端も声をかける。「一緒に戦おう」。いつも通り、お互い笑顔で握手した。

 GK同士の関係は、本来とても繊細なものだ。正GKの座は1つしかない。GK同士がピッチ外では口も利かないという話を聞くこともあるほど。しかし2人の間には、それとは違う空気が流れている。

「僕もスンテも、お互いにいろいろな経験をしてきたからこそ、今の関係性が築けているんだと思います。若いときだったら、もっとギスギスしていたかもしれないですけどね」

 ニヤリと浮かべた表情が、2人の関係性を物語る。

 スンテも「僕自身、ソガさんと良い競争をしながら、もっと一緒にプレーしたい。選手人生を振り返ったとき、ソガさんと出会えてよかったと言える関係になりたい」と言う。

 いつも通り、チームの勝利のために。2人の間には、ベテランならではのあたたかい空気が流れている。

【次ページ】 ミスした試合こそ、取材に真摯に答える。

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