“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
攻撃は世界上位だが守備は緊急事態!
サッカーU-17代表選手発表の裏側。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2017/09/26 07:00
いくら攻撃陣が優れていても守備陣が脆いと意味がない……短期決戦でのチーム作りの手腕が問われる森山監督。
代えのきかない選手の負傷欠場で選手選考が大混乱。
さらに昨年インドで開催されたAFC U-16選手権でのこと。
グループリーグ第2戦のキルギス戦で小林が負傷し、その後の試合に出場できなくなった。この緊急事態に見事に対応し、抜群のリーダーシップを発揮したのが瀬古だったのだ。
サイドバックから菅原由勢(名古屋グランパスU-18)をCBに移すと、その菅原と抜群のコンビネーションを見せながら最終ラインを統率。U-17W杯出場権が懸かった準々決勝のUAE戦では値千金の決勝弾を叩き込み、守備面でも相手のカウンターをシャットアウト。1-0で勝利を掴み、U-17W杯出場権獲得の立役者となった。
そのチームの軸たる瀬古がいない――。
この深刻な事態を受け、森山監督が考えたのはより多くのユーティリティープレーヤーを選んで、大会中にポジションの空きができないようにすることだった。
「瀬古の代わりは相当悩みました。馬場晴也(東京ヴェルディユース)が一番手ですが、彼は1歳下で経験が少ない。なので、そこに経験のある監物拓歩(けんもつ・たくむ、清水エスパルスユース)と山崎大地(サンフレッチェ広島ユース)を持ってきたが、そうすると菅原を真ん中に入れないといけなくなる。そうなると今度はサイドバックが足りなくなり……といろいろな状況を考えた中でのメンバー選考となりました」
最初からバックアップ、ユーティリティー必須の事態に。
まずは瀬古と小林ありきで、「どちらかが欠けたときにバックアップするCB1人」と、「CBもできるユーティリティープレーヤーが1人」いれば、十分計算できたはずだった。
しかし柱の1本が抜けてしまい、さらに残ったもう1本の柱の小林もどうも怪我がちで完全な状態とは言い難い。AFC U-16選手権の時のようなアクシデントはこれからも十分に起こりえることなので、なんとかリスクケアをしないといけない……。
瀬古の代役として白羽の矢が立った馬場は、森山監督が言うようにアジア最終予選を経験しておらず、学年も1つ下。能力があるのは間違いないが、高さも179cmとフランスやホンジュラスのように前線に屈強なストライカーを置く相手では不安要素がある。
だからこそ189cmの左利きの監物と182cmの山崎の2人のCBを選考したが、この2人にDFのリーダーを全面的に託すというのはまだ心もとない。相手に応じてだったり、試合展開によって使い分ける……という選択肢になるだろう。