炎の一筆入魂BACK NUMBER
優しい人間は生き残れない世界で。
広島・大瀬良大地が求める強さの形。
text by
前原淳Jun Maehara
photograph byKyodo News
posted2017/07/24 17:00
無事勝てた……お互いに激投の労をねぎらった大瀬良と中崎。この信頼関係が鉄壁の継投を生み出している。
役目を果たすため……スタイルを貫く覚悟を決めた。
一昨年、米大リーグから広島に復帰した黒田博樹にも言われたことがある。「プロの世界は生きるか死ぬかくらいの覚悟でやらないと、相手に勝てない」と――。
先発から中継ぎに転向したシーズン。意識はした。実際にマウンドでの表情も厳しくなった。
だが、常に“意識”してしまっている自分がいた。“無意識”にはできなかった。
今季、再び先発として長いイニングを求められる。瞬発力勝負の中継ぎと違い、持久力が求められる先発では、「(無理しても)保たないんじゃないかなと思う」と自分のスタイルを貫くことを決めた。
だが、それは決して周囲の言葉に目を背けているわけではない。
「いろいろ言われるけど、自分が初めてになればいいんじゃないかって」
自分がそういう投手ということを受け入れ、その上で強くなる。器用なタイプではないが、胸に秘めたものは強い。
それは、伝説の投手の背番号を引き継ぐ者の使命なのかもしれない。
“炎のストッパー”津田恒実氏の背番号を受け継いで……。
広島の背番号14と言えば、“炎のストッパー”と呼ばれた故・津田恒実氏が背負っていた番号だ。大瀬良の優しさとは対照的に、打者に立ち向かっていく闘志を前面に押し出す投手だった。
大瀬良はオフになれば、津田氏が眠る山口県周南市にある墓へ足を運ぶ。
登板後は、心の中で偉大な先輩と対話するように、その日の投球を反省する。そして前を向く。
その気持ちが――他の人たちにも伝わる。