“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
香川、堂安も悩み決断したプロの道。
高2の逸材・中村敬斗の進路は?
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2017/06/27 17:30
東京のサッカー少年は三菱養和のユニフォームを着るのが1つの目標である。その10番を身に着ける中村は、さらにスペシャルな存在である。
2度もフィニッシュの判断を変えられる冷静さ。
だがこの状況で、中村の非凡さが発揮された。
「ちょっと相手に身体を預けながら、前に出てコントロールしようと思った」と、右肩で相手DFの動きをブロックしながら、左胸でトラップ。ボールを相手が届かない場所に隠すと同時に、自分のシュートスポットへボールを置いた。
中村はフィニッシュでも冷静さを見せる。
「最初はループシュートを狙おうとしたのですが、足下のシュートの方が(ゴールする)確率が高いと思った」と判断を変え、グラウンダーのシュートを放った。このシュートは相手GKのファインセーブに阻まれたが、こぼれ球が、中村の下に返って来た。
膝下まで浮き上がるボールで、決して簡単ではなかったが、中村は軸足を踏み込み、上体を起こす。
そして、次の瞬間、またしても彼は冷静に判断を変えた。
「最初はファーサイドに蹴りたかったのですが、GKがファーをリカバーしたのが見えました。だから一瞬(そのままファーに蹴ろうか)迷ったのですが“速いスイングでニアに蹴り込めば入るかな”と思って振り抜きました」
プリンス関東でチームが挙げている7点中5点が中村。
ボールにかぶせるような右足インステップキック。意図通り、GKのニアをグラウンダーで破った。
一連のプレーで2度も直前で判断を変えて、最終的にはゴールに結びつける。まさに彼の高い能力が凝縮された一撃であり、エースとして最後にゴールを奪うという結果を残す勝負強さも示した一撃でもあった。
これで中村はプリンス関東で5ゴール目。チーム総得点である7点の大半を彼が叩き出している。
出色の活躍に、視察に来ていたスカウト陣は改めて、彼の獲得に意欲を燃やしただろう。