プロ野球亭日乗BACK NUMBER
さよなら“高知のマニー・ラミレス”!
野球が大好きな男の奇跡の2カ月。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byKyodo News
posted2017/06/02 10:50
足の怪我(肉離れ)があった、45歳(イチローより1歳年上)だった、年俸も数百万円だった……それでも野球をやりたかったということ。
通算555本塁打のスラッガーが見せた、格の違い。
背番号99のマニーが突然、ベンチから出てきたのは、試合開始15分前のことだった。
相手チームに所属する同じドミニカ出身のオスカー・テへーダ内野手に請われ、試合前のホームプレート横で熱心に打撃指導を始めたのだ。
目の前でスイングをさせてひと言、ふた言……。
そうして今度は「こうやって右ひじを内側から絞り込んで行くんだ」とばかりに、左手をテハダの肘に添えてバットの振り出し方を教える。同郷の後輩に止まることを知らないマニー先生の野球教室。さすがにベンチから「もうそろそろ」と声がかかって、慌ててベンチに戻っていく姿が微笑ましかった。
そうして試合が始まると、「4番・指名打者」で出場したメジャー通算555本塁打のスラッガーは、格の違いを見せつけた。
第1打席は空振り三振、第2打席は遊撃へのゴロ(遊撃手の失策で出塁)とノーヒットで迎えた第3打席。1点を追う1死二塁という場面で初球のストレートを左中間に放り込む逆転本塁打。6回の第4打席には左前安打を放つと、8回の第5打席には外角高めのストレートを右前にはじき返したところで、代走を送られてお役御免となった。
本気で野球に取り組んでいる姿勢が確認できた。
5打数3安打の1本塁打、3打点。
「有終の美を飾れて満足している。皆さんに感謝したい。高知は自分の家のようでした。高知は最高!」
試合後のお立ち台でこう語ったマニーは4月1日の開幕戦で見たときに比べると、かなり身体も出来上がってきている印象だった。
足に不安があるために欠場が多かったようだが、第2打席で出塁した直後には、6番のラーズ・アンダーソン内野手の右中間二塁打で一塁から三塁までしっかりと走れていた。その姿が、出るからには本気で野球に取り組んでいる証左だった。
そうして体さえしっかりすれば、その打撃技術はやはりこのクラスでは別ものである。