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1年目のイチロー評と若き日の涙。
NYの背番号2、ジーターとの会話。 

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ナガオ勝司

ナガオ勝司Katsushi Nagao

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photograph byGetty Images

posted2017/05/29 08:00

1年目のイチロー評と若き日の涙。NYの背番号2、ジーターとの会話。<Number Web> photograph by Getty Images

1995年のデビューから2014年の引退までヤンキース一筋でプレー。通算2747試合、打率.310、260本塁打、1311打点、358盗塁。

よそ者の取材に答えてくれるとは思ってなかったが。

 メジャーで最も小さいフェンウェイ・パークのクラブハウスの入り口のすぐ脇に、彼のロッカーはあった。

「時間があったら、(インタビューを)やるよ」

 と言って、ジーターは姿を消した。期待はできなかった。なぜなら、ジーターのような中心選手の周りにはいつでも地元ニューヨークのメディアがいて、話をするチャンスを伺っていたからだ。彼らはジーターと「顔見知り」であり、何気ない普段の会話から取材が始まってしまう。そのため、当時は敵地ボストンを取材の拠点にしていた私のような「よそ者」がつけ入る隙などなかった。

 ところが、彼と話そうとしていた地元メディアの1人がしびれを切らして、その場を離れた瞬間、絶好のタイミングでジーターがロッカーに戻ってきた。片手にはコーヒーカップ。間違いなく、寛いだ気分になっている。一歩、歩み寄ると、“ああ、そうだったな”というような表情になって、「じゃあ、やろうか」と始まった。

並ぶのは優等生的なコメントばかり、と思ったが。

 引退間近のカル・リプケンJr.については「守備だけではなく、攻撃面でもチームの中心になれる遊撃手という意味で、僕ら若い世代の遊撃手にとっては偉大な先駆者だ」と言った。

 攻撃型遊撃手の「ビッグ3」と呼ばれたガルシアパーラーやA・ロドリゲスについては「僕らはお互いに違ったタイプの野球選手だと思うけれど、お互いを尊敬している」と言った。

 当時、手にしていた3度のチャンピオンリングについては「3個もあれば充分だなんて人は言うけど、僕はまだまだ勝ちたいし、もっとチャンピオンリングが欲しい」と言った。

 優等生的なコメントが淡々と並んでしまったな――。そう感じた時のインタビューは成功したとは言えない。実際に彼の表情は試合後の囲み会見と変わらぬ硬いものだったが、素顔がのぞいた瞬間もあった。

【次ページ】 イチローは俺と同じく、野球を楽しんでやがるんだな!

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