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広州と済州で見たJリーグ勢の敗戦。
鹿島&浦和、完封負けの共通点は?
text by
寺野典子Noriko Terano
photograph byGetty Images
posted2017/05/25 12:25
ガックリと肩を落としてピッチを去る浦和の選手たち。過酷な条件でもいかに気迫を持って戦えるか……が試された一戦となった。
先に失点し「早々にプランが崩れた」という選手も。
3バックの前にアンカーのように阿部が立ち、柏木は1列高い位置に立つ。そして、前線は興梠慎三とズラタンの2トップ。3-5-2という“策”で挑んだ。
しかし、キックオフ直後からマルセロの対応に阿部が苦慮している様子が伝わってきた。
落ち着きなく、最終ラインに吸い込まれるようなポジショニングは阿部らしくなかった。
「10番は真ん中にいるわけでもなく、ポジションを変えるし、11番、22番と3人で流れたりもするから」
そんな不安定な状態の阿部が入れた縦パスをインターセプトされ、簡単に先制点を許してしまう。シンプルで素早いその攻撃は、広州恒大以上の迫力があった。
失点したことで、「早々にプランが崩れた」と振り返る選手もいた。
槙野智章、森脇良太が攻め上がり、遠藤航と阿部だけが残る最終ラインの前に浦和の選手はいない。そこに立つのは、縦パスを奪取しようと狙う済州の選手だった。
にもかかわらず、浦和はマイボールになるとその中央へパスを入れてしまう。当然ボールは奪われる。何度も数的優位な状態でシュートを許した。再三のピンチを西川周作が救い、相手のシュートミスにも助けられた。
「後ろでボールをキープするとか、簡単に縦に入れるんじゃなくて、ひとり飛ばしてパスをまわすとか、相手にもたせるような状況を作っても良かった」と阿部。しかし、遠藤の1バックや遠藤と阿部の2バック状態が続き、相手の術中にはまったままだった。
「耐える」気迫が尋常ではなかった済州の選手たち。
浦和の選手たちのキャリアを考えれば、帰陣することやテクニカルファールで、試合のリズムを変える巧みさや相手をいなす巧妙さも見せられるべきだ。それこそ、アウェーなのだから、失点を防ぐ慎重な戦いという選択肢も必然だっただろう。
もちろん、敵地での1点の価値は大きい。
0-0よりも1-1、1-0で負けるより、2-1での敗戦のほうが有利なのだから、得点を奪いに行く思惑も理解できなくはないが……。
それでも、0-1のまま時計は進む。
後半は相手のプレスも弱まり、自陣に引き込んだ状態でペースダウンした。浦和もショートパスで崩す時間帯も増えたが、ゴールを決めきれない。
李忠成が投入され、さらに高木俊幸を投入し、攻めの姿勢を高め、敵陣へ押し込むことはできたが、密集度が増し、そこでのミスが大きなピンチを招く危険性も高まっていた。
「集中を切らすな!」とでもいうように、済州の選手たちがお互いに声を掛け合い、手を叩き、鼓舞し合う。彼らにも余裕はなかったのだろう。「とにかくここを耐えよう」という気迫が漂ってくる。
そして、終了間際。
ボール奪取に成功した済州は、簡単に前線にボールを送る。それを受けた選手がそのままゴール前までドリブルで運び、放ったシュートがゴールネットを揺らした。