“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
柏ユースから青森山田へ電撃移籍!
代表でも活躍する17歳がなぜ……。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2017/04/16 07:00
今季昇格組の浦和レッズユースとの対戦となったプレミア開幕戦。11番をつけた中村は、新チームとは思えない連係で見事にエースの責務を果たした。
「お前はサッカーだけに集中しろ!」
黒田剛監督も青森で初めて会ったとき、中村に熱い言葉を投げかけていた。
「お前はサッカーだけに集中しろ。プロになるためにここに来たんだろう? 厳しいことも言うが、お前にはもっと走れるようになって欲しい。常に100%で戦え。想いを燃やせ。1点でも多く点を獲る気持ちでやってくれ」
新チームの一員としてピッチに立った中村は、浦和レッズユースを相手にしたプレミアリーグ開幕戦で、早速その想いを結果で示した。
【4-1-4-1】のツーシャドーの一角として先発。40分、左サイドを突破したDF佐藤拓海のセンタリングに反応した中村は、ニアサイドに飛び込んでヘッドで中央のMF郷家友太へボールを送った。これを受けた郷家がゴールネットを揺らし先制点。
59分には左CKを今度は郷家がニアサイドに飛び込んでヘッドで送って、ファーサイドでフリーになった中村が押し込んで、公式戦初ゴールを挙げてみせた。
チームは終盤に失点を重ねて、結局2-3の逆転負けを喫したが、1得点1アシストとエースとしてきっちりと結果を残した活躍ぶりだった。
初めて気づいた「覚悟」と「感謝」の本当の意味。
「デビュー戦で点が取れてほっとした部分もありますが、チームが勝てなかったことが本当に悔しい。やっぱり勝利に導くゴールを挙げないと、責務を果たしたとは一切言えませんから」
その悔しそうな表情は、すっかり青森山田の選手の面構えとなっていた。
「Jユースにいたからとか、年代別代表だったからとか、そういうのはまったく関係ありません。僕は一番後に入って来た人間。チームの勝利のために全力を尽くさないと、周りは一切認めてくれないと思っています」
過去の栄光にすがる気はさらさらない。ありのままの自分を青森山田というチームでさらけ出し、ただひたむきにサッカーと自分に向き合って、前進して行く――。
当然、この移籍は賛否両論があるし、そういった声は彼の耳にも届いている。しかし、そんなことで揺らぐほど、彼の決意と覚悟は弱いものでは無い。否の意見も、すべて覚悟の中に含まれている。
「今はキツいことですら、すべて自分のためになっていると、心から楽しめています。それに僕が青森に来て、気付いたことがあるんです。それは『覚悟』と『感謝』の言葉の真の意味です」