サッカー日本代表PRESSBACK NUMBER
原口が左を守り、久保が右で決める。
そして、全ての中心に今野がいた。
posted2017/03/24 11:40
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph by
Takuya Sugiyama
ヴァイッド・ハリルホジッチ監督と彼の仲間たちが、近未来の日本サッカーに輝かしい何かをもたらすとしたら──現地時間2017年3月23日のUAE戦は、このチームのターニングポイントと位置づけられることになるかもしれない。
難しいゲームになる材料は、行列ができるほどに多かった。
昨年11月のサウジアラビア戦を最後に、およそ4カ月の空白期間があった。それなのに、UAE戦に向けた準備は実質的に2日しかなかった。
対日本の特別な戦略として、UAEは試合会場を変更してきた。4万人強の収容人数を誇るアブダビのスタジアムではなく、観衆の熱が伝わりやすいコンパクトな空間へ舞台を移したのである。
さらに加えれば、攻撃のタクトをふるうオマル・アブドゥルラフマン(以下オマル)は、日本を迎え撃つハザ・ビン・ザイード・スタジアムをホームとするアル・アインの選手だ。かつてのアジア王者を地元の英雄が翻弄すれば、スタジアムの熱量はさらに高まる。アウェイチームの日本は、より難しいシチュエーションへ追い詰められていく。
チーム結成から主力を担ってきた本田圭佑が、所属するACミランで実戦から遠ざかったまま合流することになった。その一方で、フランクフルトで充実の時を過ごすキャプテンの長谷部誠が、負傷のために離脱してしまった。
プレッシャーに対抗するためにベテランを招集。
UAEにはホームで敗れていた。ロシアW杯アジア最終予選が混戦模様となっているのは、日本が昨年9月のこのカードで躓いたからである。
それだけにヴァイッド・ハリルホジッチ監督も、「大きなプレッシャーを感じながらの難しい試合になる」と覚悟していた。「クラブで出場していない選手は呼ばない」との選考基準を棚上げにして本田をリストにとどめたのも、彼と似た立場にある川島永嗣を呼び寄せたのも、34歳の今野泰幸を約2年ぶりに招集したのも、彼らの経験をプレッシャーへの対抗手段にしようとしたからである。