サッカー日本代表PRESSBACK NUMBER
原口が左を守り、久保が右で決める。
そして、全ての中心に今野がいた。
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph byTakuya Sugiyama
posted2017/03/24 11:40
本田圭佑の指定席だった右サイドに定着しつつある久保裕也。ベルギーリーグでも絶好調で、ステップアップが噂されている。
原口が左を守り、そして右で久保が仕留めた。
もっとも、所属クラブでのパフォーマンスに基づけば、今野の先発起用は驚きではない。同じことは、先制ゴールを叩き出した久保裕也にも当てはまる。
左サイドの原口がオマル対策で守備に労力を注ぐぶん、右サイドで仕留めたいというのがハリルホジッチ監督の思惑だった。果たして、リオ五輪世代のエース格だった23歳は、本田圭佑の定位置と見なされるポジションで2試合連続のスタメンを勝ち取り、14分にゴール右から同サイドの狭いスペースをブチ抜く。DFの背後を取る動き出しからの一撃は、指揮官に求められていたものでもあった。
信頼を取り戻す川島のスーパーセーブ。
クラブでの実績を持ち込んだのは、今野と久保だけでない。この日のスタメンは、ゲーム勘やゲーム体力に不安のない選手で固められていた。
例外的な存在だった川島も、自らのプレーで不安を振り払う。
1-0で迎えた20分だった。チーム全体の重心が前へ向きかけたところで、左センターバックの森重真人が相手との競り合いで置いていかれてしまう。数的不利の局面から、2トップの一角が川島と1対1になる。
背番号1を着けた守護神は、シューターとの間合いを詰めてコースを限定した。股間を狙ってきた一撃を、確実に弾き返した。
もしここで同点に追いつかれていたら。昨年9月のホームゲームと酷似した得点経過になっていた。埼玉スタジアム2002での日本は、1-0とリードした20分に追いつかれていたのだ。
早い時間帯に同点としたいUAEの希望を打ち砕き、自らへの信頼を取り戻した川島のセーブは、間接的にも勝敗に大きな影響を及ぼしている。長友が言う。
「あの場面は自分たちがボールを持っているときのミスが、1対1につながっていた。僕もサイドへ張ってボールをもらおうとしていたのですが、オマルをしっかり見ながらスペースを埋めるべきだと、改めて感じました」
オーバーラップをほぼ封印した長友は、左サイドからの侵入を許さなかった。30歳の的確な状況判断が、守備の安定を促したのだ。ハリルホジッチ監督が求めた個人の経験値は、こんな形でも勝利を引き寄せていたのである。