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“DFW”矢野貴章、今や本当のDF。
レオ・シルバ後の新潟で影の番長に。
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byJ.LEAGUE PHOTOS
posted2017/03/26 11:00
毎年のように主力が抜けていく古巣に戻る。その決断を下した矢野は、北信越の雄である新潟のために粉骨砕身する。
押し込まれている時間帯には、指示を出す場面も。
FWの面白さはゴールを決めることに尽きる。だが、矢野がいう右サイドバックの楽しさとは、どういうものなのだろうか。
「やっぱり、今日みたいな試合じゃないですか。彼(齋藤)のようにアタックしてくる選手との駆け引きとか、あとは今日は出せなかったですけど、自分の良さである攻撃での部分でクロスとかでかかわっていくことだと思います」
矢野が果たした役割は齋藤対策だけではなかった。試合中、押し込まれる時間が続くと積極的に中盤の選手に声をかけたり、指示を出したりしていた。「ゲームの流れを読みながら指示を出していく」と矢野は言うが、キャプテンの大野和成をうまくサポートしつつ、影の番長的な役割を果たしているようにも見えた。
「僕がいた当時(2012年)からメンバーが変わって、若い選手がたくさんいる中、経験がある方なのでチームを引っ張っていけないと思っています」
ベテランとして求められていることへの自覚は十分だ。
レオ・シルバが去った今季のチームを支える。
残念ながらチームは、第4節終了時点で2分2敗の16位。考えていたスタートダッシュに失敗し、勝ち星を挙げられず、苦しい状態が続いている。
「今日の試合はチーム全体が守備だけみたくなってしまった。これが今できることかなと思いますが、これから攻守において質と精度を上げていかないといけないですし、積み上げていかないといけないものがたくさんあるなって思っています」
4試合で得点はわずか3、失点は6。昨年はレオ・シルバの運動量と高い守備力に最終ラインが助けられていたが、彼が不在となった今、守備陣のひとりとして失点が多い現状に悔しそうな表情を浮かべる。「新潟に戻ってきたのは力になりたいという気持ちから」と、矢野は言ったが、まだまだその力には成り得ていないと感じているようだ。