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もう高萩洋次郎は“10番”ではない。
韓国仕込みの球際で代表に帰還。
text by
西川結城Yuki Nishikawa
photograph byJ.LEAGUE PHOTOS
posted2017/03/23 07:00
クラブ公式サイトの選手紹介でもテクニックやパスが強調されている高萩洋次郎。だが今は、韓国で身につけたハードな守備がそれ以上に目を引いている。
FC東京の監督が驚くその変貌ぶり。
今年の1月下旬。高萩は沖縄にいた。グアムで行われていたFCソウルのキャンプを急遽離脱し、FC東京への加入が発表された。
3シーズンぶりに返ってきたJリーグ。正直、韓国での挑戦に未練がなかったと言えば、嘘になる。ただ、FC東京は今季、大久保嘉人など数々の実力者たちを獲得し、真剣にリーグタイトルを目指す環境でもあった。逡巡はあったが、高萩は帰国した。
チームに合流し、2月下旬の開幕まで練習に励んだ。そのプレーを見て、チームを指揮する篠田善之監督は目を丸くしたという。
「洋次郎はかつてのイメージではないですね。あそこまで球際に顔を出して、激しくプレーしに行く。もちろんボールを持てば技術もある。上手くて、闘える。僕の好みの選手です」
鹿島相手にセカンドボール争いを仕掛けた開幕戦。
久しぶりのJでの戦い。高萩は、不動の姿勢で臨もうとしていた。
「JリーグもKリーグも、ボランチに求められることに大きな違いはないと思っています。ボールをつなぐところはつないで、守るところは守る。基本的にはサッカーなのでシンプルです。その中で、まずはボランチとしてチームのバランスを崩さないようにしたい」
開幕戦の相手は、前年王者であり、FIFAクラブW杯決勝でレアル・マドリー(スペイン)撃破にあと一歩まで迫った鹿島だった。FC東京はカシマスタジアムでは、'07年以降勝利がなかった。ただ高萩は、'13年には広島の優勝をこのスタジアムで迎え、またウェスタンシドニーの一員としてACLで快勝を収めていた。
自然体で迎える、3年ぶりのJ開幕戦。そこで高萩は、激しく闘った。
対面したのは、歴戦のボランチ、小笠原満男。そして今季新潟から加入したJ最高レベルの助っ人、レオ・シルバ。高萩は守備的に入ったチームの重心に位置し、敵とボールの動きを監視し、時に噛み付いていく。試合の争点は、セカンドボールの奪取。鹿島が得意とする中盤の争いでも、一歩も引けを取らない積極性でボールを回収していった。
試合は、後半にFC東京が挙げた虎の子の1点を守り切り、勝利。守り勝ちだった。
「このチームは、まず守備が安定している。だからこういう粘り強い戦いができれば勝ち点を重ねられる。攻守のバランスを崩さないまま、0-0で試合を進められればチャンスは来ると思っていた。僕個人としては、鹿島相手にセカンドボール争いを仕掛けることが今日の仕事だった。うまく拾えたと思います」