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もう高萩洋次郎は“10番”ではない。
韓国仕込みの球際で代表に帰還。
posted2017/03/23 07:00
text by
西川結城Yuki Nishikawa
photograph by
J.LEAGUE PHOTOS
人の印象やイメージは、時に当てにならない。そう感じさせられた選手である。
高萩洋次郎。先週発表された日本代表メンバーに、約3年半ぶりに選出されたMF。ハリルジャパンになって初選出なのはもちろん、それは突然の抜擢だった。
2014年まで広島でプレーし、2015年1月にオーストラリアのウェスタンシドニーへ移籍した。AFCチャンピオンズリーグ(ACL)でも活躍を見せ、日本への凱旋試合となった鹿島戦では、ゴールとアシストを挙げて勝利の立役者となった。
その年の夏、プレーに惚れ込んだFCソウル(韓国)からオファーを受け、渡韓した。当時チームの監督でJリーグでもプレー経験のあった元韓国代表FWチェ・ヨンス(現・江蘇蘇寧監督)から、直々に電話で口説かれたという。
韓国での日々は充実していた。Kリーグでのプレーは新鮮であり、刺激的だった。
「生活も含めて、ソウルでの日々は本当に良かった。最高でしたね」
韓国についての話を振ると、笑顔が返ってきた。
FCソウルでは、主にボランチとして活躍していた。球際やフィジカルコンタクトで、日本より激しいプレーが連続する韓国。守備的MFとなれば、ボールを奪いに行くためにガツガツとした姿勢が不可欠だ。
10番タイプ、というイメージが一変。
日本のサッカー関係者やファンの中で、高萩のプレースタイルと言えば“10番タイプ”というイメージだった。広島時代は1トップに佐藤寿人が構え、その背後に位置する2人のシャドーストライカーの一画を担った。高萩はパスで味方を動かす側の役割で、足元のテクニックと183cmの恵まれた体格を生かして攻撃陣を操っていった。
イメージは、パサーであり、テクニシャン。守備を連想させる選手ではなかったのである。
そんな彼が韓国で直面したのは、プレーの変化の必要性だった。
「正直、これまでのままの感覚だとやっていけないなと痛感しました。韓国で一番自信を付けたのは、守備面だと思っています」
FCソウルはACLの常連組でもある。韓国、アジアの舞台で、高萩は常にフィジカルファイトを求められる環境にいた。
そして昨季、チームはKリーグで優勝を果たし、ACLでは準決勝まで進出。惜しくもアジアの頂点は逃したが、ボランチでの彼の挑戦はチームの結果につながる成果を残したのだった。